歯科疾患.

あなたの愛犬の歯は、茶色くなっていませんか?グラグラと動きませんか?

歯周疾患は、しばしば発見されないまま進行することがある。進行した病態でも犬や猫が不快感をほとんど示さないこともある。

口腔内の解剖
口腔内はいろいろな機能を持っている。口腔は消化管と呼吸器疾患の入口である。唾液は口腔内を潤わせ、咀嚼や嚥下を助ける。唾液は抗菌性があり、細菌の侵入から口腔内組織を保護する助けとなる。唾液の蒸発により体熱を放散させる。歯と舌は咀嚼、グルーミング、防衛、行動に重要である。犬や猫の歯はそれぞれ特殊な機能を持っている。切歯で物をつかんだり噛んだりする。犬歯は物を捕らえたり刺したりする場合に用いられる。前臼歯と後臼歯は物を切断し、すりつぶし、咀嚼する時に用いられる。上顎第4前臼歯と下顎第1後臼歯からなる裂肉歯は、咀嚼行動の基本となる歯である。犬と猫の大きさは異なるが、全ての歯の形態と機能、構造と成分は同様である。

歯周疾患の発生率
歯周疾患は犬と猫の成熟動物で最も頻発する疾患で、いろいろな種、系統、年齢で観察され、発生率に関する各国における調査では、調査された全ての犬と猫の個体数の60~80%であることが報告されている。米国各地の54件の動物病院で行った予備調査結果では、全ての年齢を含む39,556頭の犬と13,924頭の猫で最も頻繁に診断される疾患は口腔内疾患であることが示唆された。

口腔内の疾患状態
原発性口腔内疾患は、大きく分けて、歯をおかす病態、歯周組織をおかす病態、他の口腔内組織をおかす病態がある。主に歯がおかされる障害は、摩耗、咬耗、齲蝕、内因性着色、破歯細胞性吸収、破折、歯髄炎。主に歯周組織・口腔粘膜がおかされる障害は、歯肉炎、歯周炎、歯肉過形成、根尖周囲腫瘍、歯肉口内炎、腫瘍、化学性あるいは温熱性損傷、潰瘍。

危険因子
歯周疾患を引き起こす主因は細菌性プラークと細菌の代謝物である。犬や猫の縁上および縁下プラーク中細菌の特性を明らかにした研究が報告されている。臨床的に健康な歯肉を持つ犬の縁上プラークは主としてグラム陽性好気性細菌によって構成される。プラークが成熟すると、細菌はグラム陰性嫌気性細菌が優位となる。歯周疾患に伴う炎症と組織破壊は、歯周組織への細菌とその代謝産物の直接作用と、宿主の免疫反応の間接作用によるものである。このため、細菌性プラークは歯周疾患の発生の最も重要な物質といえる。白質は唾液の蛋白質、細菌、脱落上皮細胞、白血球片などの軟らかい混合物である。歯石はプラークが石炭化したものである。着色(後天性の歯芽着色「外因性着色」)は、はじめにペリクルが着色し、一部が石炭化することによって発現し、さらに、ペリクル、プラーク、歯石が積層する。また、種種の栄養、化学的因子と細菌が着色を引き起こす。

栄養と食餌の特性として、野生イヌ科およびネコ科動物の自然環境での獲物と比較して市販されている犬用あるいは猫用のフードの形状が劇的に変化することが、飼育されている犬や猫の歯周疾患の程度に関係していることはしばしば取り沙汰されている。

歯周疾患の全身性合併症
歯周疾患は全身性合併症を発症させやすくすることがある。ヒトでは、歯周疾患が:1)心臓疾患の危険因子として認識され、2)肺への感染や脳梗塞を誘発すること、また、最近の報告では、3)低体重児出産に関係することが報告されている。犬では、慢性歯周疾患と、心臓弁と気道から肺がおかされる病態とに関係があることが多くの報告で推測される。DeBowesらは、重度の歯周疾患と、腎臓、心臓、肝臓の病理組織学的変化との間に関係があることを報告している。歯周組織の感染によって細菌はリンパ管、血管に侵入し、菌血症を引き起こす。

歯周疾患の病態発生における宿主と細菌の関係
歯周疾患は劇的な組織の破壊とそれに続く治癒期と休止期が周期的に繰り返される。歯周疾患の病態発生は4期に分けられ、:1)細菌のコロニー形成期。唾液によるペリクルがエナメル質表面に蓄積し、口腔内細菌がすぐにコロニーを形成し、プラークの形成によって増大する、2)細菌の侵入期。プラーク内細菌とその代謝物は歯肉組織に侵入し、宿主の炎症反応を引き起こし始める、3)組織の破壊期。細菌とその代謝物による直接毒性と、宿主を介した間接的な毒性反応が歯周組織の破壊をもたらす、4)治癒期。疾患の消退期は炎症反応の消退と歯肉の治癒が見られる。

自然の食餌
初期の文献では、野生イヌ科動物とネコ科動物が食べる食餌にはプラークの蓄積を遅延させる効果があり、家畜化された個体に見られるような口腔内全体の歯周疾患に罹患しにくいと報告されている。ペットフードの市販化がしばしば家畜化された犬や猫の歯周疾患発生率の増加とその進行に関係する因子として言及されている。野生イヌ科、ネコ科動物の食餌は棲息する場所、環境、個々の狩猟能力による。しかし、その自然の食餌とは、通常、オオカミやコヨーテなどの食餌となる小型齧歯類や小型哺乳類であった。Coylerは「動物が歯で引き裂かなければならないもの」と言及している。しかし、特に、野生イヌ科動物は、おそらく果物や野菜、血液、腸、筋肉、軟骨、骨髄、骨などがついている肉片を食べていると思われる。






参考文献

小動物の臨床栄養学第4版

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Colyer F. Periodontal disease. In:Miles AEW,Grigson C,eds.Coly's Variations and Diseases of the Teeth of Animals,revised ed.Cambeidgs,UK:Cambridge University Press, 1990;543-550

Watoson ADJ. Diet and perodontal diserse in dogs and cats.Australian Veterinary Journal 1994;71:313-318

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ドライドッグフードと鼓腸症との関連性を勉強しています。

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