2009/07/26
ドライ(粉)ドッグフードの大量給与は危険
自然界に生息している哺乳動物が急性胃拡張AGDに罹ることはめったにないと言われている。野生肉食動物のオオカミは、好んで食べるシカやヘラジカなどの大型動物を群れで協力し合って襲い、狩りが成功すると大食漢ぶりを発揮し、1頭当たり9キロもの肉を食べる。また、小型の哺乳類や鳥やトカゲ、ヘビなどのほかに果実も食べることが知られているが、「腹部が膨張しAGDで死亡した」などということは聞いたことがない。科学研究によれば、ドライ(粉)ドッグフードと、肉と骨の飼料を犬に食べさせて比較した場合、明確な違いが示された。論文にはこのように要約されている。以下抜粋すると、
食後の検査で、市販のドライドッグフードを日に1回給餌されていた犬の胃は他の3グループの犬のものより大きかった。そしてこの観察は、検視で判明したことと十分に相関していた。1日に必要な熱量の総量を1回の市販のドライドッグフードの食餌から摂取するように犬に要求するとき、結果として食後の胃の体積が大きなものとなる。
このことは、食後2時間で実施した剖検の際に測定した胃の内部の食物量とその重さがより大きな数値であったことが示している。また、食後2時間の時点で胃の湾曲の長さより大きな値であったことにも反映されている。
断続的に絶食させたのち満腹するまで食べさせたネズミの胃は、随時食べることのできたネズミの胃より大きく、重くなる。本研究では、毎日23時間絶食させられた後に市販のドライドッグフードを満腹するまで食べた犬の胃は、日に1回肉と骨の飼料を与えられた犬の胃や、どちらかの飼料を日に3回与えられた犬の胃よりも重かった。
映画透視検査法により、市販のドライドッグフードを日に1回給餌した場合、食後すぐに胃の拡大が起こっていたことがわかった。剖検から、その拡大が少なくとも食後2時間続いていたことがわかり、検視時の空の胃の重量測定により、胃組織に慢性的な変化が起こっていたことが示された。移動する節電性複合体と胃が空になることの間に、ある関連した変化が存在するのかもしれないという推定は合理的である。
犬の急性胃拡張は家畜により起こる病気であり、発症の頻度は、最も大切に飼われる純血種の犬において最も高く、自由に走り回り勝手に餌をあさる機会のある犬において最も低い。野生のイヌ科動物は、動物性蛋白質と粗質物(植物の繊維ではなく、動物の屍体の不消化もしくは消化困難な部分)に富み、炭水化物が少なく熱量密度が低いものを食べる。
それとは対照的に犬舎の中の飼い犬は、動物性蛋白質と粗質物が少なく、炭水化物が多くて熱量密度の高い餌を食べさせられるのである。さらに、市販用飼料は、材料を細かく挽き、過熱処理を施し、デキストリンを添加して「消化しやすく」、発酵しやすくして製造される。
そのような飼料のみを毎日1回ずつ与えられると、犬は大量に食べ、そして食後に水や胃の分泌物が加わった時に張れを起こす。これは、肉と骨の飼料を食べた後の消化の状態と対照的である。犬の胃が持つ消化能力により、後者の飼料の嵩は容易に減じるのである。
指摘しておくべきことは、胃が空になる速度は熱量密度に反比例するということであり、また正常な胃の運動にとって、消化しない粗質物の存在が重要であることは、数種の動物において明確に立証されてきた。反芻動物における粗質物の必須の役割は十分に証明されており、粗質物を奪われたニワトリの胃は拡張し、弛緩してしまう。
AGDで死亡した犬は、食後12~18時間経過してなお、しばしばその胃の中に食べたものが全て存在している。つまり、胃を空にする作用の遅れを示しているのである。本論文執筆者達に明らかとなったことは、市販のドライドッグフードを日に1回与えられた犬の胃が拡大し、重くなったことである。このことから、これらの胃がAGDに罹りやすくなっている胃であると示唆できるだろう。
また、この研究において、ドライドッグフードを日に1回与えられていた犬がAGDを発症して死亡した。

図4 市販のドライドッグフードを日に1回の給餌法を実施したのち激しく膨れ上がった犬の胃の放射線写真
「犬の胃機能に対する餌と給餌頻度の影響」
アメリカ動物病院協会ジャーナル 1987年 第23巻