犬の胃内容物排出および運動性に対する食餌組成の影響




この論文には下記の指摘がある。


たった1日の給餌実験から得られたデータ。




犬の胃内容排出および運動性に対する食餌組成の影響:
急性胃拡張における関与の可能性
  


Colin F. Burrows, B Vet Med, PhD; Ronald M. Bright, DVM MS; Crispin P Spencer, DVM



要約

胃拡張・捻転は急激に起こり、生命を脅かす大型犬の疾病である。その原因は不明であるが、しばしばドライシリアルべーすの食餌摂取がその誘発因子なのではないか主張されることがある。そこで本試験では、市販のドッグフードが犬の胃の運動性および内容物排出に対しどのように影響するかを検討することを目的とした。

乱塊法デザインで4頭の大型犬に3種類の異なる食餌を与えた(食餌A=肉類ベースの缶詰、食餌B=シリアルベースで77%水添加、および、食餌C=ドライシリアルベース)。各実験は3重測定で行った。

胃の運動性は、胃漿膜および近位十二指腸に沿って縫合したAgAgCI電極5本とストレンゲージ2本を用いて評価した。犬には毎日同じ時間に食事を与え、消化管(胃腸)運動性パターンが摂食時から空腹時へと変化する時間を測定した(「切り替え」)。

胃内容排出は、胃の放射能を記録して評価した。標識樹脂を混合した食餌を与えた後、放射活性の対数を時間に対してプロットし、胃内容排出の半減期を計算した。3種類の食餌の給餌から切り替えまでの平均時間は、Aについて9.7±0.9時間、Bについて10.5±0.4時間、Cについて11.0±0.8時間であった。食餌が胃内容排出半減期に与える影響はごく僅かなものであった。

(食餌Aでは2.2±0.3時間、食餌Bでは2.6±0.4時間、食餌Cでは2.9±0.3時間、)。このデータは、健康な大型犬の胃の運動性および内容排物出は、食餌組成により影響されないことを示している。

大部分の大型犬はコストと扱いやすさからシリアルベースの食餌を与えられているため、これらの
食餌が胃拡張・捻転の誘発因子であると誤解されてきた可能性がある。

                 (中略)

結果

胃内容排出-等しいカロリー量を与えた場合、缶詰の肉類ベースの食餌、ドライシリアルベースの食餌、および水と混合したドライシリアルベースの食餌は、いずれも同じ速度で胃から排出された(表2)。平均は(1)缶詰の肉類ベース、(2)ドライシリアルベース+水、(3)ドライシリアルベースの順で徐々に増加されたが、その増加は有意なものではなかった(表3)。

しかしながら、同じ食餌を与えられた各犬間に有意な変動が認められた(表2)。外科手術は胃内容排出速度に有意な影響を与えなかった。

消化管(胃腸)運動性-食餌組成は運動性の食後パターンに影響を及ぼさなかった(表4)。給餌から切り替えまでの時間は(1)缶詰の肉類ベース、(2)ドライシリアルベース+水、(3)ドライシリアルベース(表4)の順で徐々に長くなったが、その増加は有意なものではなかった。また、個々の犬の間で、切り替えまでの時間に幅広い変動があった(表4)。

                 (中略)


考察

本試験の結果、食餌の物理化学的組成は胃内容排出速度または犬の消化管(胃腸)の運動性の食後パターンの時間に影響を及ぼさないことが明らかになった。このことは、食餌の組成が胃の機能に影響を与え、胃拡張を誘発する因子であるとする仮説が成り立つ可能性が低いことを示している。

胃内容排出を制御するメカニズムは複雑であり、食餌の酸性度、浸透圧および脂肪またはトリプトファン含量すべてが胃内容排出速度に影響する。液体もまた、幽門を通過するには直径1mmより小さい粒子に分解されなくてはならない個体よりも速く排出される。これらすべての理由から我々は、缶詰の肉類ベースの食餌およびドライシリアルベースの食餌のような、全く異なる物理化学組成の2種類の食餌は異なる速度で胃から排出されるであろうと推測していた。

しかしHuntおよびStubbsは、人間において食事の胃からの排出速度には、その栄養素密度から予測できることをしめしており、我々の実験で用いた食餌は容量は異なるものの等カロリーであったことから、翻って考えれば、胃内容排出速度に差異がなかったことは驚くに当たらないのかもしれない。

食餌の排出にかかった合計時間(2~3時間)はおそらく、胃液の分泌および前庭部の収縮にとって十分であり、したがって、食餌の物理化学的組成による差異を生じなかったのであろう。

                 (以下略)


























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