2009/10/21
サルのAGD、知っておこう、殺してしまわないために!論文 サルにおける急性胃拡張:胃内容物、血液、及び餌の微生物学的研究
概要
急性胃拡張をきたした24頭の類人猿霊長類のうち、21頭がその胃内容物にクロストリジウムを有していた。18頭の正常なサルのうち、2頭のみが胃内容物にクロストリジウムを有していた。クロストリジウムは罹患していた5頭のサルを飼育していたケージから採取したモンキービスケット、及び受け入れた11ロットの餌のうち、5ロットから分離された。これらのビスケットを正常なサルに餌として与えて後、この微生物を胃内容物から分離することができた。この病態において、大量のガスを産生することを説明できる微生物は他に分離されていない。
過去3年にわたり、著者らの研究所において、旧世界霊長類4種の34頭が急性胃拡張と診断された。そのうち26頭につき、鼓腸をきたしたサルにおける胃内細菌叢を研究報告するために微生物学的に検査した。これにはヒヒ種9頭、カニクイザル2頭、アカゲザル14頭、及びベニガオザル1頭が含まれている。
これらのサルの大多数には1日1回モンキービスケットを与え、週に1度、オレンジ、リンゴ、ビタミンミネラルサンドイッチを補充餌として与えた。水は自動システムで自由摂取とした。(中略)
微生物学的検査:胃内容物及び血液を、急性胃拡張をきたした26頭から細菌学的検査のために収集した。サンプルはサルの死亡後できるだけ早く採取した。3頭は例外的に死亡前に採取した。18頭(アカゲザル10頭、ヒヒ6頭、カニクイザル1頭、ベニガオザル1頭)のサルを一晩、断食させた後にクロストリジウム・パーフリンジェンスの存在につき胃内容物を試験した。(中略)
断食させた18頭のサル(アカゲザル7頭、ヒヒ種5頭、カニクイザル1頭、及びベニガオザル1頭)のうち14頭に、大量のクロストリジウム・パーフリンジェンスを含むことが知られているモンキー食餌を与えて4~6時間後、再び胃内容物を得た。存在するクロストリジウム様微生物の相対数を決定するためにすべてのサンプル(胃内容物、血液、粉々になったビスケット)をグラム染色した。(中略)
結果
病理学:唯一の一貫した肉眼的異常は胃及び小腸のガス及び淡褐色の液体による重度の拡張であった。胃及び小腸の壁は正常よりも薄く、2頭のサルでは死亡前に胃が破裂していた。1頭のサルを死亡後1時間以内に検査したところ、重度の皮下気腫をきたしていた。(中略)
微生物学:(中略)急性胃拡張をきたしたサルの24頭の胃サンプルにうち、21サンプル(88%)がクロストリジウム・パーフリンジェンス陽性であった。(中略)
5頭の罹患したサルのケージからビスケットを採取したが、いずれもクロストリジウム・パーフリンジェンスA型陽性であった。(中略)
考察
今日までに報告された鼓腸の全例における顕著な特徴は、胃を拡張させる大量のガスの存在であった。この現象は2つの疑問を提起する:(1)外見から判断して、なぜこれらのサルは圧力を軽減するために嘔吐することができないのか;及び(2)このガスの源は何か。大量のガスの存在は、発酵する基質と発酵を可能にする細菌叢の存在を必要とすると考えられる。(3)基質は市販されているモンキー食餌として容易に入手できる。
急性胃拡張をきたした24頭のうち21頭(88%)の胃内容物はクロストリジウム・パーフリンジェンスを含んでおり、連鎖球菌は19頭(79%)のサルに存在していた。18頭の正常な断食をしたサルの中でサンプルとした2頭(11%)のサルに少数のクロストリジウム・パーフリンジェンスA型が認められた。
一方、連鎖球菌はこれらの14頭(78%)のサルの胃内容物に認められた。したがって、クロストリジウム・パーフリンジェンスは急性胃拡張をきたしたサルにおいて、有意に多く認められる唯一の分離された微生物であり、また顕著な数が認められた唯一のガス産生微生物であった。
これはクロストリジウム・パーフリンジェンスが本症候群における胃のガス鼓腸の原因であることを示唆するものである。多くの血液培養の結果は、胃内容の結果と同様であったが、他の典型的な急性胃拡張のサルが血液培養陰性を示したという事実から、本症候群における主要な要因として、クロストリジウム敗血症を排除する傾向にある。
正常な空腹胃には、2、3の乳酸桿菌、及び腸球菌を例外として細菌叢がないので、これらのクロストリジウムにつき可能性が考えられる源を探求した。多数の食物が媒介するクロストリジウム微生物を疾患の発症の原因とみなすヒトにおける所見に基づいて、餌供給者のところに残されていた餌を検査した。
全部で5つの餌供給者サンプルは陽性であったので、受け入れた餌の輸送物を調べたが、45%がクロストリジウム・パーフリンジェンス陽性であった。餌の中の微生物の数は、ヒトにおいてクロストリジウム腸性毒血症をきたす必要であると報告されている数に達していなかったが、汚染されたビスケットを既知の胃内細菌叢を有するサルに餌として与えた場合にクロストリジウム・パーフリンジェンスA型が全てのサルから分離され、3頭は初期鼓腸の臨床徴候を示した。
B.T.ベネット その他 イリノイ大学医療センター、生物学資源試験所、ラッシープレスビテリアン聖ルークス病院動物資源施設、MDアンダーソン癌研究所、
ラルストンピュリナ・モンキーチャウ(食餌) Lab.An.Sci 30:241-244 1980