GDVの真相その(1) メール

                        甲第187号証訳文

送信者  :ハーバート・J・ヴァンクライニンゲン
送信日時:2006年1月4日

節子へ
以下のことを原さんにお伝え下さい。

私はAGDに関する文書を5~6日費やして読み、内容を検討してきました。現在陳述書は手書き原稿で出来ています。今日は吹雪のため大学が開いてなくて、秘書は来ていません。明日彼女にタイプ打ちの文書にしてもらってから、eメールとフェデラル・エクスプレス便でお送りします。

陳述書には記載しませんが、個人的にお伝えしておきたいことが数点あります。

モリス(Morris)家はモリス財団を形成し、ヒルズ・ドッグフードも彼らの会社なのだということを、知っておいて下さい。ダヴェンポート博士(Dr Davenport)は財団の仕事をしていますが、結局ヒルズ・ドッグフードの利益を代表しているのです。彼女は自身が獣医で、その仕事は獣医学の学生・研究者や獣医達を教えることを目的としています。しかし彼女はドッグフードの単なるセールスマンでしかないのです。大学のうちいくつかは、彼女が使う無料教科書「小動物の臨床栄養学」(Small Animal Clinical Nutrition)を容認しないでしょう。私自身は、数年前にその本を捨ててしまいました。彼女は自らの肩書をカンザス州立大学の「外部教授」(Adjunct Professor)と言っています。つまり学部の正規の教授陣の中に入っていないという意味です。そしておそらく大学から給与を得ていないでしょう。モリス家は当該大学に資金援助をしていますから、数個の講義分の報酬はもらうかもしれませんが。大抵の大学は、ドッグフード会社を代表している人による無料の「教育的な」講義など容認しないでしょう。私だったらしません。

ムーア博士(Dr Moore)は事実を歪曲しています。彼はどうやら退役した軍関係者のようですが、彼の唯一のAGD研究は、単に軍の基地にいる犬が毎月何頭AGDで死亡したかを数えることだけでした。季節によってそれに変化があるかどうかを確かめるためです。彼がどこかのドッグフード会社から研究費援助あるいは顧問料を受け取っていたかどうかの事実を立証することが重要でしょう。

グリックマン(Glickman)は正直です。彼は、大豆を含有するドッグフード以外のドッグフードにもAGDの原因があることを示したようです。しかしそれで、あなたが買ったドッグフードつまりサイエンス・ダイエットを製造業者の指示通りに犬に食べさせたらAGDを発症して死んでしまったのだ、というあなたの懸念を変えることはありません。グリックマン博士の研究はモリス財団のモリス・アニマル・ファウンデーション&ラルストンピュリナの資金援助を得てきたのだということに注目して下さい。この援助の影響力で、彼はAGDのガスは犬が飲み込んだ空気なのであるとかその他の解釈をするに至ったのでしょうか?そのドッグフード会社から、彼は研究費援助の他にいくらの顧問料を受け取っていたのでしょうか?

この状況をみると、数年前に起こったタバコ問題を思い出します。タバコ会社は研究機関を形成し、癌は複数の原因から生じたものであるという見解を示しました。ところが彼らはタバコの喫煙が肺癌の原因であることを最初からずっと知っていたのです。ドッグフード業界は大変規模が大きく、からんでくる利害も大きなものですヒルズがそうであるように。

 敬具

 H.J.Van Kruiningen より



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タバコ問題については、タバコ御用学者の陰謀により世界で540万人、日本で11万人以上が毎年タバコが原因で亡くなっている。

                      「肺がんと御用学者」





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デボラ・J・ダベンポート

                          陳述書

1) 経歴
私は、現在獣医臨床栄養学の教育を推進する非営利組織であるマーク・モーリス研究所の執行役員を務めており、獣医科系の学生を対象に教鞭をとっています。マーク・モーリス研究所は、日本の16の獣医科系大学(北海道大学、帯広畜産大学、岩手大学、東京大学、東京農工大学、岐阜大学、大阪府立大学、鳥取大学、山口大学、宮崎大学、鹿児島大学、酪農学園大学、北里大学、麻布大学、日本大学および日本獣医畜産大学)を含め世界中における約40以上の獣医科系大学でペットのための栄養に関する講義を行ってきました。

また、私は、カンザス州立大学(米国カンザス州マンハッタン)獣医学部獣医臨床科学の非常勤講師を兼務しています。さらに、東京大学農学部獣医学課程の非常勤講師も務めており、2004年には臨床栄養学課程を担当したした。2006年にも再度教鞭をとる予定です。

また、現在ヒルズ・ペット・ニュートリション社(以下、「ヒルズ社」といいます)で、専門教育課程の部長を務めており、開業獣医師を対象に生涯教育を行っています。私は、ヒルズ社の臨床試験におけるコンテンツ・エキスパートであり、研究データを検証したり、私の専門分野に関連する事項に関し提言をしたりしています。ヒルズ社は、ドッグフードである「サイエンスダイエット・アダルト・メンテナンス」を含む、日本ヒルズ・コルゲート株式会社が販売するペットフードを開発し、製造しています。

私は、ノースカロライナ州立大学(米国ノースカロライナ州ローリー)獣医学部で動物学(学士)を専攻し、オハイオ州立大学(米国オハイオ州コロンバス)で臨床科学(胃腸病学)の理学修士号を取得しました。また、オーバーン大学(米国アラバマ州オーバーン)において獣医学の博士号を取得しました。私は、獣医心臓外科、大型動物内科、小動物内科、神経学および腫瘍学の分野における専門医を認定するための米国獣医師会の認可を受けた組織であるACVIM(米国獣医内科学会)が認定した内科専門医です。私は、ACVIMの資格認定委員会の元会員で、小動物内科の専門医としての認定を受けています。なお、ここにいう小動物には、大型および超大型犬を含むあらゆる種類の犬が含まれます。内科学会に加えて、消化器病学および臨床栄養学にも関心を持って研究しています。

2) 「小動物の臨床栄養学」について
マーク・モーリス研究所は「小動物の臨床栄養学」(第4版)というタイトルのテキストブックを発行しており、同書の日本語版の一部を原告が甲第39号証として証拠提出しています。私は同書の著者の一人であり、726頁から810頁(英語オリジナル版の頁数)の「胃腸疾患および膵外分泌疾患」その他の章を担当しました。これは、日本語版では827頁から921頁に相当します。以下では、頁数を示すときは日本語版におけるものを示すことにします。

この章は、胃腸系統ないし膵臓の中でもどの部分にかかわる疾患かということにより疾患を区別して論じています。したがって、この章の最初の頁にあるとおり、この章は、さらに下記の節に分かれています。口腔疾患(833頁から835頁)、咽喉疾患および食道疾患(835頁から841頁)、胃の疾患(841頁から854頁)、小腸の疾患(854頁から878頁)、大腸の疾患(878頁から892頁)、膵臓の機能不全(892頁から910頁)、症例(901頁から921頁)。

胃拡張(GD)とは、胃が気体、食物ないし液体の交じり合ったもので拡張した状態を言います。胃拡張・胃捻転(GDV)では、胃が拡張・稔転して、胃の内容物は閉塞し、胃、脾臓、膵臓への血流が阻害されます。GDVでは心臓の血液の環流も阻害されるため、イヌがショック状態に陥ることがあります。胃拡張もGDVも胃の病気であり、よって、本書「胃の疾患」の節の中の847頁から850頁において記述されています。

これに対し、原告が甲第39号証の一部として引用している890頁ないし892頁は、「大腸の疾患」の節の「鼓腸(flatulence)」の項からの引用です。「鼓腸」とは、正式な定義では、消化管に過剰なガスが存在する状態を指し、したがって、胃中に嚥下された空気が溜まっている状態をも含む概念です。それにもかかわらず、「鼓腸」は、一般的に医学用語としても非専門家の間でも腸にガスが溜まった状態を指して使われており、胃にガスが溜まった状態については用いられていません。本書で著者が「鼓腸」という場合は、大腸にガスが溜まった状態を指しているのであり、胃にガスが溜まった状態のことは指していません。

888頁に説明されているとおり、鼓腸(正式な定義)においては、オナラが出る、げっぷが出る、お腹が鳴る(腹鳴)などの症状が見られます。しかしながら、さらに同頁に説明されているとおり、イヌの飼い主にとっては、過剰なオナラが慢性の不快な問題であり、よって獣医師に対し鼓腸に関するアドバイスが求められることになります。オナラの原因は大腸における過剰なガスであるため、鼓腸に関する記述は本書888頁から892頁の「大腸の疾患」の節の中で論じられているのです。

「鼓腸」という疾患はGDVとは異なります。GDVとは違って、鼓腸自体はイヌの健康にとって危険なものではなく、ただ飼い主にとっては不快であるというだけです。「小動物の臨床栄養学」における「鼓腸」についての記述はGDVについての記述ではないのです。すなわち、大豆がGDVに対する危険要因だとするものではありません。反対に、849頁に記載されているように、大豆を含有する食物は、以前、GDVの危険要因ではないかと疑われたこともありましたが、最近の研究では、実際には大豆を含む食物がイヌのGDVの危険性を高めるものではなかったということが証明されています。大豆を含む食物がGDVリスクを高めるものではないということは、現在では獣医学の消化器官専門家の間で定説となっています。

3) 鼓腸ないしGDVにおけるガスの産生
本書「鼓腸」に節の中に、ガスが産生されるいくつかの原因について示した図22-20があります(891頁参照)。図22-20の下の注記には、消化吸収されなかった食物が大腸を通る過程で細菌(バクテリア)により発酵されることを示しています。この発酵過程は大腸でガスを発生させるのです。消化しにくい成分を含む食物は大腸におけるガスの産生を高め、よって鼓腸を引き起こす可能性があるのです。

GDVは上述したように胃の拡張に関する疾患です。図22-20に示されるように、発酵により生じるガスではなく、嚥下された空気が胃中における過剰なガスの源です。事実、胃中に存在する細菌は極めて少ないために、図22-20では胃には細菌の存在が示されていません。図22-20では、細菌の存在は大腸の部分にのみ図示されています。胃酸の産生度が極めて高いために、胃中の細菌の総数は極めて少ないのです。胃中では細菌が少ないために、健康なイヌにおいては、未消化の食べ物は胃中で発酵するより前に胃から排出されて腸に達してしまいます。消化しにくい食物が胃中で過剰なガスを産生することはありません。ガスが産生されるのは大腸においてであり、よって、GDVとは関係ありません。GDVでは胃中の気体により胃が拡張し捻転しますが、これを引き起こすのは嚥下した空気です。イヌが食べたドッグフードの成分は嚥下した空気の量には何らの影響も与えません。

4) 大豆の危険性

原告は、甲第57号証として、「AZ Professional Dog Food 」というタイトルの書面を証拠提出しています。同書面には、(1)大豆には、トリプシン・インヒビターという大腸における酵素の働きを妨げる物質が含まれており、消化不良を引き起こす原因となる、および、(2)ドッグフードの製造工程では食物は30秒しか加熱されず、大豆に含有されるトリプシン・インヒビターは中和されない、との記載があります。

大豆に含有されるトリプシン・インヒビターがドッグフードの瀬尾象工程においては中和されないというのは事実ではありません。ウォルサムペット栄養総合研究所著の「犬とネコの栄養学 第2版」に記載されているとおり、トリプシン・インヒビターは熱に弱く、ペットフードの製造工程における加熱によりその大部分が除去されます。ヒルズ社の製造技術者に確認したところ、ヒルズ社のドライドッグフード製品は、製造工程のさまざまな段階において、華氏170度から300度(摂氏約77度から149度)の高熱で30分ないし45分間加熱されています。この過熱と調理時間は大豆に含まれるトリプシン・インヒビターを中和するのに十分なものです。

サイエンスダイエット・アダルト・メンテナンスを含む、大豆を含有するヒルズ社が販売するドッグフード製品はいずれも臨床試験を行いAAFCOの基準をパスしなければなりません。この試験をパスしているということは、すなわち、サイエンスダイエット・アダルト・メンテナンスを含むこれらの製品において、生の大豆に含まれているトリプシン・インヒビターが製造工程において消化機能に何らの影響のないレベルまで除去されていることを示すものです。

いずれにせよ、トリプシン・インヒビターが小腸での消化や大腸での発酵を阻害することにより生じる消化不良の問題とGDVとは関係がなく、また、これがイヌのGDV発症リスクを高めるものではありません。イヌに大豆を与えることによりGDVのリスクが高まることを証明するいかなる証拠も研究も存在しません。私のイヌの消化器官における生理学的なガス産生のプロセスに関する知見からしても、また、GDVに関する現在の学術論文からしても、イヌのGDV発症とイヌに対し大豆を与えることは何らの関連性もありません。

5) GDVリスクと特定のブランドのドッグフードの関連性の不存在

私が認識している限り、GDVのリスクと関係があると科学的に証明されている食物と関連する要因は食餌の量のみです。研究によれば、一日に1度だけ、量の多い食餌を与えられているイヌはGDVを発症する危険性が高いことが証明されています。私の知る限り、いかなるブランドのドッグフードを与えているかによりGDVのリスクが異なるとの結果を示した科学的ないし学術的な研究はありません。

私が知るGDVの学術文献からも、他の獣医学者との意見交換からも、また私自身の獣医胃腸学者としての経験からしても、サイエンスダイエット・アダルト・メンテナンスもしくはその他の大豆を含有するヒルズ社の製品に、他のブランドのドッグフードに比して高いGDV発症リスクがあるとは考えられません。GDV発症の危険性がどのブランドのドッグフードを与えているかによって影響されることはありません。

以上のとおり間違いありません。


 2005年10月11日

Deborah J. Davenport, DVM



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              小動物の臨床栄養学第4版・用語解説

胃拡張・稔転 gastric dilatation-volvulus 胃拡張が原因で捻転を起こしている症候群。胸の深い大型犬種に多く見られ、早期に発見しないと致命的。鼓腸ともいう。

鼓腸 flatulence 胃または腸内でガスが過剰に産生される状態。放屁は肛門からガスが放出されたもの。




ローレンス・T・グリックマン GDV

                        
                          陳述書

1) 経歴

私は現在パデュー大学(米国インディアナ州)獣医学部病理生物学科で疫学および環境医学の教授をしています。同大学においては臨床疫学部長も兼務しています。私は、ニューヨーク州立大学(ビンガムトン)において生物学の学士号および生理学の修士号をそれぞれ1964年および1966年に取得しました。また、1972年にペンシルベニア大学獣医学部でD.V.M.を取得しました。1975年には、ピッツバーグ大学公衆衛生大学院において、疫学および伝染病学のM.P.H.を取得し、また、1977年には疫学および公衆衛生学の博士号を取得しました。

私は米国疫学会から認定を受けており、1982年に特別研究員の地位を授与されました。私は、現在フロリダ州、ニューヨーク州およびペンシルベニア州において開業医の免許を持っています。

疫学では、人間および動物集団における疾病・健康のパターンを特定するために統計的分析が用いられます。1974年以降、私は、疫学者として動物の疾病および健康問題に関する250件を超える研究を行い、論文を発表してきました。これらの研究においては、疾病を有する対象と疾病を有しない対象を一組としてデータをチェックし、統計的分析により、遺伝子、環境または行動様式等の要因が当該疾病といかなる相関関係にあるのかを測定します。これらの研究により、疾病の原因が特定されることはありませんが、特定の環境、遺伝子プロファイル、行動またはその他要因を有する人間または動物が一定の疾病を発症する危険性がどの程度あるのかということがわかります。

1994年以降、私は、胃拡張-胃捻転(GDV)の疾病に関して、私の知る限りでは、学会の他のどの研究者よりも多い、13件の論文を執筆してきました。論文の詳細については末尾添付の履歴書を御参照下さい。また、私は、GDVの発症およびそれに起因する死亡の原因を特定するために、約2000頭の飼いイヌを対象に最長5年間の追跡調査を行いました。これは、伴侶動物(イヌ、ネコを指します)の健康に関する過去最大規模の研究です。さらに、アメリカン・ケンネル・クラブ、米国コリークラブ、ーリス動物財団およびラルストンピュリナ>(Ralston-Purina)を含む多数の団体から、GDVに関する研究支援を目的とするものその他の助成金を受けています。また、1996年から現在に至るまでの10年間、パデュー大学における「イヌの胃拡張-胃捻転研究プログラム」の部長を務めています。

GDVの危険因子に関する研究および一般的調査結果

私は、GDVに関する研究の一環として複数のデータを検討し分析しました。私が分析したデータベースの中で最も大規模なものは、Veterinary Medical DataBase(VMDB)から抽出したものです。同データベースには、ネコやイヌなどのペットの疾病に関し、米国に存する大学付属動物病院からの提供されたデータが標準化されて集積されています。このデータベースには、1980年から1989年までの期間における12の動物病院の診療録に記録された、GDVを発症した1934頭のイヌ(「症例」)およびGDVを発症していない3868頭のイヌ(「対象」)に関するデータが含まれています。このデータベースおよびその他の4-5組のデータベースにより、大規模な回顧的情報を分析することができました。

さらに、1994年から1998年まで、私は、パデュー大学獣医学部の臨床疫学部でGDVに関連する危険因子を調査するイヌの予測研究を実施しました。この研究では、GDVを発症しやすいとして知られる11種類の合計1920頭(秋田犬111頭、ブラッドハウンド126頭、コリー198頭、アイリッシュセッター264頭、ロットワイラー113頭、スタンダード・プードル135頭、ワイマラナー100頭、グレートデン216頭、アイリッシュ・ウルフハウンド193頭、ニューファンドランド298頭、およびセントバーナード176頭)のイヌが研究対象となっています。これらのイヌは研究開始時点ではすべて健康でGDVの病歴はなく、1998年まで5年間にわたり観察されました。私が知る限り、これは、この種の予測研究の中では世界で最も大規模なものです。

10年以上の期間に及ぶ研究で集積されたこれらのデータから、私は、GDV発症の危険性を高める因子について複数の結論を得ました。まず、第1に純血種のイヌは、雑種犬に比べてGDVの危険性が平均して高いこと。第2に、イヌのGDVの危険性は加齢に伴い高まること。第3に、兄弟姉妹、子供など第一度近親者がGDVを発症しているという事実はGDVの危険性と関係すること。第4に、一般に、同じ犬種でもサイズが大きくなればなるほど、GDVを発症する危険性が高くなること。第5に、GDV発症の危険性は、イヌの体格に関連しており、その中でも深くて狭い胸郭を持つ犬種のGDV発症の危険性が高いこと。第6に、同じ犬種の中でも痩せたイヌまたは生まれて最初の1年に重病もしくは慢性疾患を患ったことのあるイヌは、GDV発症の危険性が高いこと。第7に、「怖がり」の性質を持つイヌは、GDV発症の危険性が高いこと。第8に、早食いするイヌは、GDV発症の危険性が高いこと。第9に、高い位置にある餌皿から食べるイヌは、GDV発症の危険性が高いこと。そして最後に、1日数回に分けて少量の餌を給餌されるイヌよりも、1日1回大量の餌を与えられるイヌのGDV発症の危険性が著しく高いこと。

上記に記載する因子のなかでも、最も重要な危険因子は、体格、年齢、第一度近親者にGDVの病歴があること、高い位置にある餌皿からの食事および1日に1回大量の食餌を与えられることです。さらに、ストレスがGDVを引き起こす触媒作用になることも研究で証明されました。例えば、旅行、新しい環境、食生活の急激な変化は、イヌのGDV発症を誘発するようです。高い危険を有してるイヌにこれら複数の要因が加わった場合、そのイヌがGDVを発症する可能性は非常に高くなります。

GDVは、種々の要因によって引き起こされる多因子性の疾病です。私が知る限り、GDVを引き起こす単一の原因はなく、各々共通点のない複数の要因が、あるイヌがGDVにかかりやすいか否かということに影響を与えているのです。第一度近親者のイヌにGDVの病歴があるイヌを繁殖させない、1日に2、3回に分けて少量の餌を与えるなど、GDVの危険排除または軽減するために、危険因子を知っておくことは重要です。それでも、これらの予防的処置を行うことよりGDV発症を完全に防ぐことはできません。

また、一定の大型および超大型犬は、その体格ないし体系ゆえにGDV発症の危険性が特に高いことが分かりました。圧倒的に危険性の高い犬種はグレートデンです。計算したところ、生後8年の間に、グレートデンは42,4%の確率でGDVを発症することが分かりました。私は、更なる研究の結果、飼い主がどれだけ予防策を講じるかに関係なく、グレートデンはその生涯のある時点において50%近くの確率でGDVを発症すると考えています。飼い主がその飼育に最善を尽くしたとしても、グレートデンの場合GDVを発症する可能性は非常に高いのです。

GDVの再発予防における胃腹壁固定術の重要性

GDV発症の危険性が低いイヌを選択せず、グレートデンのように危険性の高いイヌを飼うならばGDV発症の危険性を確実に減らすための唯一の方法は、胃腹壁固定術を施すことです。胃腹壁固定術は、胃の位置を正常な状態に戻し固定させる手術であり、GDVの再発予防に最も効果的であることが証明されています。GDVを発症したイヌに胃腹壁固定術を施さなかった場合、再発する確率は71%に達します。(1995年Egertsdottir)。これに対して、適切な処置を受け、すぐに胃腹壁固定術の手術を行ったイヌのGDV再発率は5%未満でした(同書)。ヨーロッパおよび米国の複数の臨床報告で、すべてのイヌに関して、胃内の空気の除去(減圧)を行った後、速やかに胃腹壁固定術を行うべきことが推奨されています。私は、手術を行わない場合のGDV発症率の高さを考えた場合、危険性の高いイヌ、特にグレートデンに関しては、GDVに罹患する前であっても予防的に胃腹壁固定術を施すだけの価値があると考えています。

私の研究から、GDVによる死亡率は33%に達することがあると判断しています。飼い主が、GDVの症状を早期に発見し、すぐに必要な処置を講じることが、イヌの生存に極めて重要となります。

ヒルズ社の「サイエンス・ダイエッット」とGDVの関連性について

私が行った研究を含め、GDVの原因および危険因子に関し行われた研究の中で、特定のブランドのドッグフードがGDVと関係があるまたは発症原因であるとされるものは存在しません。

私は5年間の予測研究において使用されたデータに基づき、GDVを発症したイヌ(「GDV発症グループ」)とGDVを発症しなかったイヌ(「GDV未発症グループ」)が給餌されていた市販のドライ・ドッグフードを、ブランド別に比較してみました。この分析結果については添付を御参照下さい。

5年間の予測研究で調査対象となったイヌのうち、1592頭のイヌについては完全な食餌情報が得られています。1592頭のうちGDV未発症グループは合計1488頭、またGDV発症グループは合計104頭でした。これらのイヌに対しては、およそ70種類の異なる市販のドライ・ドッグフードが与えられていました。私達は、飼い主に対して、食餌に何らかの変化があった場合は私達に連絡するようにお願いするとともに、半年毎にイヌに変化がないかを確認しました。

GDVを発症しなかった1488頭にうち、62頭(4,2%)はヒルズ社のサイエンス・ダイエット製品を給餌されていました。反対に、GDVを発症した104頭のイヌの中では、3頭(2,9%)のイヌがヒルズ社のサイエンス・ダイエット製品を給餌されていました。ヒルズ社の成犬用サイエンスダイエット・メンテナンスに限ってみると、メンテナンスは、GDV発症グループのうち2頭(1,9%)に給餌されていたのに対して、GDV未発症グループでは、38頭(2,6%)のイヌに給餌されていました。したがって、GDVを発症したイヌの中に占めるヒルズ社のサイエンス・ダイエット製品を給餌されていたイヌの割合は、GDVを発症しなかったイヌの中にサイエンス・ダイエット製品を給餌されていたイヌの占める割合よりより少なかったのです。

これを別の角度から見ると、研究対象となった1592頭(いずれもGDVを発症しやすいイヌ)のうち、104頭(6,5%)がGDVを発症していますが、ヒルズ社のサイエンス・ダイエット製品を給餌された65頭の中では3頭(4,6%)のみが、また、ヒルズ社の成犬用サイエンスダイエット・メンテナンスを給餌された40頭の中では2頭(5%)のみがGDVを発症しており、この確率は研究対象となったすべてのイヌに対してGDVが発症する確率である平均6,5%をかなり下回っていました。

この割合を、研究において給餌された別のその他大手ドッグフードブランドと比較すると、ユカヌバ製品を摂取したイヌは、GDV未発症グループには79頭(5,3%)おり、また反対にGDV発症グループには7頭(6,7%)いました。ユカヌバ製品を給餌されていた86頭(8,1%)にうち、7頭がGDVを発症したのです。また、アイムズ製品は、GDV未発症グループの123頭(8,3%)、GDV発症グループの13頭(12.5%)に給餌されていましたが、アイムズ製品を給餌されていた136頭のうち(9,5%)がGDVを発症したことになります。結論としては、GDVを発症したイヌの中でユカヌバまたはアイムズのいずれかの製品を給餌されていたイヌはより多かったのであり、これらの製品を摂取したイヌがGDVを発症した割合は、他の製品を給餌されたイヌよりも高かったことになります。

ヒルズ社のサイエンスダイエット以外の製品を給餌された1527頭のうち、GDVが発症した割合は6,6%(1527頭のうち101頭)でした。これと比較すると、ヒルズ社の製品を給餌されたイヌのGDV発症率は4,6%、またヒルズ社の成犬用サイエンスダイエット・メンテナンスについては5%でした。したがって、ヒルズ社のサイエンスダイエット製品を給餌されたイヌは、他の製品を給餌された場合と比べて、GDVを発症しにくかったことになります。

要約すると、私達の研究において、ヒルズ社のサイエンスダイエットのドッグフード製品が、イヌにGDVを発症しやすくさせるとする証拠はないのです。

大豆または発酵とGDVには関連性がないことについて

私が知る限り、市販のドッグフードに成分として含まれる大豆が胃内においてGDVを発症させる原因となるガスの発生を促進させること、また何らかの形で大豆がGDV発症の危険性に関与していることを証明した研究はありません。逆に、私の研究では、大豆がGDVとは無関係であることが証明されています。

私は、個人的に、GDVを発症したイヌの胃内におけるガスは、過度に呑み込んだ空気であり、バクテリアの発酵によって形成されたガスではないと考えています。私がこのように考えるのは、GDVを発症したイヌの胃内におけるガスが、室内の空気と同じ成分を有することを証明したDennis Caywood博士の研究に基づいています。また、胃拡張は数分で起こることもありますが、発酵によるガスはこれほど早く起こらないので、両者は矛盾しています。さらに、私の経験では、胃内に発酵するような食物が一切残っていない状態にある深夜の時間帯にGDVを発症したイヌの症例も多くあるのです。GDVを発症したイヌの胃内から処置の過程で取り出された食べ物が発酵していたようであったと専門家でない方がコメントしているのを見たことがありますが、これが発酵でないことは明らかです。胃内から取り出された食物は、例えば、胃の不調によりイヌが吐いた物(発酵されていない状態のもの)と同じものであり食物が胃内の高い酸性環境において分解された結果です。

結論:

一定の遺伝的な要因を含む様々な要因、特にイヌの体格および体型が、イヌがどれだけGDVを発症しやすいかに影響を与えます。胃腹壁固定術を施す以外に、危険性の高いイヌがGDVを発症する確率を排除する方法はありません。

私の研究では、ヒルズ社のサイエンスダイエット・メンテナンスとGDVとの間には関連性または因果関係は認められませんでした。イヌのGDVに関する10年間以上にわたる私の研究、またイヌの疾病に関する30年以上の経験・研究からして、私は、大豆がGDVの原因であるとも何らかの形で関与しているとも考えていません。

ヒルズ社の成犬用サイエンスダイエット・メンテナンスに含有される大豆がGDV発症の原因であるとする主張は、科学的証拠、実験または疫学的調査によって支持されるものではありません。

以上のとおり相違ありません。


 2005年11月25日

 Lawrence T. Glickman, DVM



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 大きいイヌの年寄、空気に注意? 縫えば安心?



ジョージ・Ed・ムーア GDVの論説

           GDVによる胃の膨張は”飲み込んだ空気”と主張・・・
            
   大型犬は→空気を飲み込み過ぎて→胃拡張になり→捻転が引き起こされ→GDVに

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                         陳述書

1) 経歴
私は現在パデュー大学獣医学部獣医病理生物学科で臨床疫学の助教授をしています。私はテネシー大学において畜産学の理学学士号及びD.V.M.をそれぞれ1977年及び1979年に取得しました。また、ジョージア大学(アセンズ)で生理学の理学修士号、パデュー大学(インディアナ州ウェストラファイエット)で臨床疫学の博士号を取得しました。1989年から1992年まで、ジョージア大学獣医学部小動物内科大学院で臨床研修(研修医)を行いました。

私は、米国獣医内科学会から認定された小動物内科専門医です。ここにいう小動物には、大型及び超大型犬を含むあらゆる犬種が含まれます。このような専門的知見を基礎として、私は、あらゆる犬種における、正常な機能を有するイヌの消化器官及び機能異常を有するイヌの消化器官に生じる生理学的経過に通じています。私は、所属専門団体の一つである「比較消化器病学学会(Comparative Gastroenterology Society) 」において、メンバーとなっています。また、私は、米国獣医予防医学学会から認定された獣医予防医学の専門医です。私は、テネシー州、ミズーリ州及びテキサス州において資格を有する専門医として診療に携わっていたことがあり、現在インディアナ州で開業医として有効な免許を持っています。

1979年から2002年まで、米陸軍獣医隊の獣医務官及び獣医として米陸軍の現役の軍務についていました。私は、この職務において、軍に関連する小動物(主にイヌ)に関する公衆衛生政策立案及び治療を担当していました。世界中に約2000頭余りの大型犬種を抱える米国国防省軍用犬獣医サービス(U.S.Department of Defense Military Working Dog Veterinary Service)の主任を務め、また陸軍総合医療センター&スクール獣医学部(U.S. Army Medical Depaetment Centr and School Department of Veterinary Science)の部長を務めました。私は、本訴訟において被告人のコンサルタントとしての仕事を依頼されるまで、被告人とは何ら関係を有していませんでした。

私はイヌの胃拡張・胃捻転(GDV)の発見、処置、研究に関し、豊富な経験を有しています。私は、軍用犬プログラムにおいて働いていた際、1993年から96年の4年間にかけて死亡した927頭の軍用犬を調査・研究しましたが、これらのイヌのうち11頭につき1頭の死亡がGDVによるものでした。また、私は1980年代初頭の3年間、当時の西ドイツに在住し、同地においてもGDVの症例を個人的に扱ったり、多くの症例を耳にする機会がありました。私は、職業上、これまでに50頭から75頭程度のGDVの症例を取り扱っており、胃腹壁固定術を含む手術を施しています。

2) GDV 序説
a) 概説
GDVは、(1)胃の膨張または膨満(拡張)と(2)胃の食道及び小腸との接合部分での「ねじれ」(捻転)、の二つの側面。要素から構成されています。GDVにより死にいたることがあるのは、膨張し捻転した胃が大静脈を圧迫し、その結果心臓への血流及び心臓から他の臓器への血流が妨げられ、体内の細胞に必要な酸素及び栄養が届かなくなるからです。このプロセスから急速にショック状態に至り、身体のさまざまな機能が喪失することになるため、直ちに処置が必要となります。

b) 発症しやすい犬種
GDVを発症する危険性は全ての犬種にありますが、純血の大型または超大型犬種で特に発症しやすいとされています。研究によれば、米国においてもっとも胃捻転の危険の高いとされる犬種は、グレートデン、セントバーナード、ワイマラナー、ゴールデンセッター、アイリッシュセッター、スタンダードプードルの6つです。米国において次に発症しやすいとされる犬種には、アイリッシュウルフハウンド、ボルゾイ、ブラッドハウンド、マスティフ、秋田犬、ブルマスティフがあります。中でもグレートデンはきわめてGDVの発症率が高い犬種です。グレートデンにおいては生涯において1回以上のGDVを発症する確率が36,7%から42,4%であるとされています。

c) 症状
GDVは突然、しかも特に深夜に発症することが多いとされます。夕食後の直後よりは、午後10時から午前3時の間に発症するのがもっとも一般的です。過度のガスの蓄積(このガスはほとんど呑み込んだ空気です)により胃が膨張するのですが、胃の中身はガスのみである場合、ガスが液体と混じった泡状である場合、及び、ガスと食べ物が混ざったものである場合があります。GDVを発症したイヌには、落ち着きなく歩きまわる、げっぷをしようとするが出ない、実際にげっぷをする、吐く、腹部膨満、吐き気をもよおす、無気力、動くのを嫌がる、呼吸しようとしてウーという声を出すなどの症状が観察されます。

d) 処置法
GDVまたはその疑いがあると診断された場合、最初にとるべき処置は胃内の空気の除去(減圧)です。減圧を行うためには、胃内にチューブを挿入する、外科手術、troharization (胃穿刺)という3つの方法があります。胃穿刺とは、胃内の減圧を行うため、体の外から胃に直接針を挿入することをいい、通常重篤な状態の場合にのみ、とりあえずの処置として行われます。ただし、胃穿刺だけでは十分ではなく、さらなる処置が必要となります。

経口胃チューブによる方法では、チューブを口から食道を通って胃に達するまで差し込みます。この方法では胃内の圧力が急速に減じ、よってショック状態は緩和されますが、必ずしも胃の位置(ねじれ)が元に戻るわけではありません。胃の位置を正常な状態に戻し正常な血流を回復させるためには、外科手術(胃整復術)を行い、獣医師が手で胃を解剖学的に正常な位置に戻すことが必要です。この外科手術を行う際に、捻転によって胃の細胞がどの程度傷ついているかまたは壊死にまで達しているかについて調べることになります。GDVであるとの診断を確定するため、獣医師は外科手術を行う前に胃のX線写真をとるのが通常です。患者のイヌについてショックがどの程度のレベルに至っているか、長時間の麻酔に耐えられるかを手術の前に判断する必要がありますが、米国では外科手術を速やかに行うことが推奨されています。

また、米国では、GDVを一度でも発症したイヌに対しては、予防的に胃腹壁固定術を施すことが推奨されています。この手術では、再度捻転が起こることがないように、腹壁と胃壁を縫合して固定します。胃の損傷が著しい場合には細胞が回復するまで間手術を控えたほうが良い場合もありますが、その他の場合は手術を行うべきとされます。この手法に関する最初の論文のうちのひとつがドイツ(ハノーバー)の獣医学大学によって発表されています。この研究によれば、1年間に大学の診療所で処置された約40頭のイヌのうち、手術を行わなかったイヌでは75,8%が再発したのに対して、手術を行ったイヌでは僅か6,6%しか再発しなかったとの結果が出ました。同様に、オスロにあるノルウェー大学獣医学部による研究では、GDVを発症したイヌに胃腹壁固定術を施さなかった場合、再発する確率は71%に達することが報告されました。

3) GDVの原因
概説:
GDVの原因について、獣医学会では、一般的に、単一の原因はなく、複数の要素が複合してGDVを発症させるものであり、そしてどのような要素が原因となりうるかは個体によって異なると考えられます。同じ環境で育てられ同じ世話をされて同じ餌を与えられたイヌの間でも、片方はGDVを発症するのにもう一方はしない、ということはあるのです。GDVを発症しやすいとされる犬種に関してさえも、GDVを引き起こす原因となることが証明された要素はありません。

他方、あるイヌに備わった特定の素質、例えば犬種、サイズ、体型、体重または年齢などが、そのイヌが生涯においてGDVを発症するリスクを高めることがあります。一般的に言って、その犬種が大型犬であればあるほどそのイヌがGDVを発症するリスクは高くなります。ゆえに、大型ないし超大型の純血種はもっともGDVのリスクが高いのです。

加えて、イヌの体型、特に胸部または腹部が占める割合は重要な要素であることがわかっています。胸郭が狭く深い犬種は、胸郭が広く浅い犬種よりGDVの発症率が高くなっています。同じ危険の高い犬種の中でも、個体ごとの体型がGDVリスクに影響することもわかっています。たとえば、アイリッシュセッターにおいて、胸の深さと広さの割合はGDVリスクに影響することがわかっています。アイリッシュセッターの中でも、深くて狭い胸郭を持つ個体は一般のアイリッシュセッターに比べて発症率が高いのです。同様に、腹部が深く狭いグレートデンはそうでないグレートデンよりGDVにかかりやすいのです。なぜ胸部ないし腹部の割合がGDVリスクに影響するのかは解明されていませんが、深く狭い胸部ないし腹部を有するイヌでは、特に、満腹時に回転運動を行ったとき-たとえばイヌがごろごろ転がったり運動したときなど-に、胃ないし靭帯が伸長・回転しやすいのではないかと考えられています。

また、研究者は、GDVにかかりやすいイヌはそのような遺伝的な素質を有しているのではないかと考えています。親または兄弟がGDVにかかったイヌはGDVを発症する危険性が高いのです。この点、研究者はそのイヌの胸部ないし腹部がどのような形をしているかという点に関する遺伝子が影響しているのではないかと考えています。したがって、ブリーダーがドッグショーのためにある特定の体格を有するイヌを繁殖させるなどの行為によりGDVリスクが高められたり、また他の遺伝的問題が増加している可能性があります。

同様に、加齢もそのイヌに備わった危険因子のひとつです。癌と同様、GDVにおいても加齢が特に超大型犬においてGDVリスクを高めていることが証明されています。年齢が高くなるほど、GDVにかかりやすくなるのです。超大型犬が歳をとるにつれてGDVにかかりやすくなる理由は、歳をとるにしたがって胃の靭帯が伸びてしまうことによるのではないかと説明されています。胸が深くて狭い超大型犬では、胃の靭帯が伸びるのに十分な空間があるからです。

また、そのイヌの全般的な健康状態が危険因子となると考えられています。研究によれば、飼い主が痩せていると思っているイヌは、GDVを発症する危険性がより高いことがわかっています。また、生後1年間に慢性のまたは重大な健康状態を経験したイヌが発症する危険性が高いこともわかりました。

最後に、イヌの気質または興奮性、ならびに早食いにつながるような競争的な環境などの一定の環境要因が、GDV発症の原因になり得ることが複数の研究によって示唆されています。

4) GDV:胃中のガスの発生源
胃拡張においては、胃内の過剰なガスにより胃が通常の形状を超えて膨張します。1970年代に行われた研究には、胃内の食物がバクテリアによって発酵したことによりこのガスが形成されると推論するものがありましたが、このような推論を支える合理的な証拠は提示されていませんでした。現在では、このガスは主として呑み込んだ空気(呑気)から成る、というのが獣医学界定説です。

理論上は、胃内のガスは、(1)呑気症により呑み込んだ空気、(2)唾液の重炭酸が胃酸と混じって形成された二酸化炭素、(3)発酵により形成される水素、メタンガス及び二酸化炭素、の3つのいずれかである可能性があります。しかし、複数の実験により、胃内のガスは主として呑み込んだ空気ということが証明されています

Van Kruiningenという研究者の行った初期の研究は、胃内のバクテリアによる発酵と胃拡張の間に因果関係があることを証明しようとしました。Van Kruiningenは、GDVで死亡したイヌの胃の内容物を分析して、一定量の二酸化炭素が含まれていることを発見しました。彼は、二酸化炭素が存在することは発酵によりガスが形成されるという理論を支えるものだと考え、その二酸化炭素は唾液中の重炭酸が胃酸と混ざったことにより発生したかもしれないという可能性については解明も反証もしませんでした。現在では、Van Kruiningen自身を含む研究者が、この研究の方法及び結論に限界があったことを認めています。

当初のVan Kruiningenの研究では、死亡してから6ないし50時間も経過したイヌの胃中からテスト用のサンプルが採取されています。生理学観点からは、死亡及びその後の時間の経過がテスト結果に影響していると考えられます。したがって、このテスト結果は、GDVを現に発症しているイヌの胃の中でなにが起こっているかを示すデータではありません。

加えて、Van Kruiningen自身もその後の研究で、当初発酵の原因ではないかと推測していたClostridiaというバクテリアがGDVを発症したイヌに共通して存在しているわけではなかったということを認めています。

さらに、発酵の過程においては、メタン及び水素も発生するはずであるにもかかわらず、この研究では胃中のメタンないし水素が測定されていません。Caywoodという研究者が後に行った研究では、GDVに罹患したイヌの胃中のメタンないし水素は無視できるほどの量であり、胃中のガスは室内の空気とほぼ同じ成分であるということが証明されました。したがって、この研究結果は発酵理論とは矛盾することになります。CaywoodはGDVを発症したイヌの胃中の二酸化炭素は、イヌが呑み込んだ重炭酸を含む大量の唾液が胃酸と混じりあって発生したのではないかと説明しています。

Van Kruiningenの研究と異なり、Caywoodの研究はGDVを発症している生きたイヌで行われています。呑み込んだ空気ないし呑気症は、健常なイヌ及び人間における胃腸内のガスの主たる発生源です。Caywoodは、GDVにより手術を受けているイヌからガスのサンプルを採取して、これを測定し、一般に認められるこのセオリーがGDVのイヌの胃中のガスに当てはまるのかどうか検証しました。テスト結果を分析したところ、胃中のガスにおける水素及びメタンは無視し得るほどの量であり、Clostridiaは胃の内容物から培養されませんでした。したがって、胃中のガスは発酵によるものではなかったのです。

さらに、一般に理解されている消化管における生物学的プロセスから言っても、胃内で発酵が起こるということはきわめて考えにくいことです。Burrowsという研究者の研究によれば、健康な大型犬における胃の空虚化速度(胃が空になる速度)は、食物の種類によって異なるものでなく、胃が空になるまでにかかる時間はおおよそ食後2~3時間であるということが示されています。今ではその信用性に疑義があるとされている前記のVan Kruiningenによる一連の研究では、ある一定の食物は、他の食品に比べて胃から排出されるまでの速度が遅く、よってバクテリアによる発酵が起こり副産物としてのガスが産生するとしていました。しかしながら、Burrowsの研究により胃の空虚化の速度は食物の種類によって変わらないということが示されたことによって、Van Kruiningenの従前の研究は発酵のメカニズムとも矛盾するということが証明されました。

一般的に、食物はイヌの胃や小腸を通過する過程で、消化できる部分は砕かれて体に吸収されます。消化できない部分はゆっくりと残りの消化管を通って最終的には大腸内に存在するバクテリアによって処理されます。消化されなかった残滓が発酵し、ガスが発生するのは大腸においてなのです。しかし、大腸内のガスは、オナラとなって体外に排出されるのであり、小腸の長さ、及び「蠕動」と呼ばれる小腸の前進運動のため、胃に押し戻されることはありません。したがって、大腸での発酵はGDVの一部である胃拡張の原因たりえません。

最後に多くのバクテリアが存在する大腸と異なり、酸の濃度が高い胃内ではきわめて少量のバクテリアしか存在していません。バクテリアの量が少ないこと、及び、通常食べ物が胃から排出される速度からしても、生物学的にGDVを発症させるほど(すなわち、胃拡張を起こすほど)大規模な食物の発酵が胃内で起こることを裏付ける科学的な証拠はありません。さらに、上述したように、GDVにおける胃拡張は通常突然発生するのです。仮に胃内に発酵を起こすに十分なバクテリアが存在したとしても(一般的に胃腸学専門家の間でそのようには考えられませんが)、胃拡張を発生させるほどの量のガスを産生するには少なくとも数時間はかかるのです。さらに、これには大型犬やある特定の犬種に限ったプロセスではありません。ある一定の食物が胃内で発酵するものであれば、これを食べたすべてのイヌの胃が拡張するはずです。発酵または特定の食餌がどうして特定の犬種にのみ影響を与えるのか説明がつきません。

仮に胃中で発酵が起こるとしても、イヌが食べ物を食べた途端にGDVを発症するなどということはありえません。発酵には時間がかかるからです。すなわち、イヌが食事をしている間または食後すぐにGDVを発症したとするならば、発酵がGDVの原因であることはありえず、むしろ呑気症が原因だったと考えられます。なぜなら、このように急激に発病するということは、食事中にそのイヌが大量に空気を呑み込んでいたということと符合するからです。

5) ドッグフードにおける大豆の使用
大豆は特に小麦、とうもろこし、大麦と比較して、たんぱく質及びカロリーの効果的な供給源です。大豆はイヌの大腸においてガスを発生させることがありますが、このガスはオナラとして排出されます。オナラが増えることは飼い主にとっては不快だとされることはありますが、イヌの健康とって有害なものではありません。

私の知る限り、大豆入りのドッグフードGDVの原因であるとするいかなる科学的・学術的文もまたその他のしません。

結論:
大豆が胃捻転を引き起こす原因となる胃拡張の発症に関与しているということが証明されたことはありません。私の知る限り、大豆が何らかの形で関与しているとの結論を支持する科学的証拠ありません。同様に、私の知る限り、GDVと特定のブランドのドッグフードの間に何らかの関連性因果関があることを示す研究結果ありません。

生物学的プロセスによれば、ドッグフードに含まれる大豆が発酵して、イヌの胃中で胃拡張を引き起こすほど大量のガス発生させるとの証拠ありません。食べ物は発酵が起こるほど長い間胃中に留っていませんし、高い濃度の胃酸が存在するため、内には発酵を引き起こすのに十分な量のバクテリア存在しません。反対に、獣医学界の胃腸病専門家の間では、胃拡張を発症した胃内のガスは主として呑み込んだ空気から成るというのが広く知られまた受け入れられている考え方です。

以上から、メンテナンスが他の多くのドッグフードのブランドと同じく大豆を含有しているとしても、大豆はイヌの胃拡張を引き起こすガスの発生とは無関係です。ヒルズのドッグフードに含まれる大豆がイヌのGDVを引き起こしたとする原告の主張は科学的な証により裏付けてられておらず、かつ、獣医学界において存在しているあらゆる科学的証拠と矛盾していま

以上のとおり相違ありません。



 2005年10月11日

  George E. Moore, DVM, Ph.D


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 やはり空気は危険か? 

 それとも空気を飲み込む犬が悪いのか?

 だとするなら、呼び名を ”空気飲み込症候群” に?・・・



 つづく




GDVの空気嚥下説を検証する

科学的見地からGDVの真相にもう少し迫ってみます

           
     犬はどのようにして死ぬまで空気を飲み込み続けることができるのか?


ちまたでは、「GDVの原因はわからない?不明である?複数の要素が複合して?GDVによる胃の膨張は飲み込んだ空気?」などという情報が広く浸透しています。通常、健常な犬の胃の中は、微量の発酵があるものの、ほとんどは飲み込んだ空気です。問題なのは、捻転や破裂を引き起こす急性胃拡張の場合はどうなのか?ということです。

理論上では、胃内のガスは、(1)呑気症による呑み込んだ空気、(2)唾液の重炭酸が混じって形成された二酸化炭素(これについては追って詳述します)、(3)発酵により形成される水素及び二酸化炭素、の3つのいずれかになります。

1977年に、ケイウッド博士が、胃拡張捻転症候群GDVによる胃の膨張は、呑気症、すなわち、嚥下による空気が原因、と結論づける論文を発表しました。以降この空気嚥下説を、グリックマン博士が採用し、自らのGDV研究における理論立ての軸にしています(グリックマン氏の研究は追って詳述します)。

しかし、現実的には、GDVの発生機序を説明する場合、この空気嚥下説では大きな矛盾が生じます。GDVによる胃の膨張は、最大でバスケットボールほどの大きさにまで拡張します。そもそも、犬が他の臓器を圧迫させ死に至るほど、自分で空気を飲み込み続けることはあり得ません。また、これを科学的に説明した論文等も存在しません。これは他の動物種でも言えることです。

つまり、GDVの犬は、いったいどのようにして死ぬまで空気を飲み込み続けることができるのか?これが空気嚥下説の”最大の疑問”です。

また、ケイウッド氏の研究は、使用された7頭の犬の胃内ガスの採取法や研究手法で、科学的な欠陥がいくつか指摘されています。これに対し、ケイウッド氏本人は何ら反証もせず、業界から消えてしまいました。





以降は、空気嚥下説を支持する学者、細菌発酵を提唱し続ける学者の見解を記載いたします。







法律を守ればAGDは減る!

           チワワからグレートデンまで、元来犬は肉食動物ですよ

多発するAGDに愛犬達の生命は脅かされています
飼い主も、いつ起こるともしれないAGDの恐怖に怯えながら・・・

アメリカではGDVの症例数は「1964年~1974年までに、1500%の増加を示した・・・」とする、爆発的な数字が報告されています。また、グリックマン博士のデータを参考にすると、世界中でドライ(粉)ドッグフードを食べている大型犬全体のなんと、約6.5%がGDVに。捻転を伴わないAGDを含めると、発症率はもっと高くなるのです。この背景には、愛犬家達のおかげで大きくなった、ペットフード産業界の存在があります。

犬のAGDは、ドライドッグフードに潜む有害性を如実に示したものです。既に科学の目が”犯行の現場”を目撃し、その証拠を突き止め明らかにしてきました。ドライドッグフードに含まれる、高度に加工処理された荒挽き大豆と穀物粒の炭水化物が発酵の基質であり、死の原因となります。しかも実験で、このような膨張型食品は、肉食動物である犬の消化管には適さないことも示しています。製品としての安全性は既に崩壊しているのです。もはや業界は、偽りでしかありません。インチキ・・・

市場では、正確な情報は組織的に隠蔽され、あたかも、ドライドッグフードの安全性を科学的に実証しているかにように巧妙な外見を装い、不当に販売が継続されています。その結果、一般消費者であるブリーダーや愛犬家は何の疑いもなく製品を買い続け、AGDを回避する術がないまま、愛犬に食べさせ続け、何ら危険性を知ることができない犬が被害を受け、犠牲に・・・

              

              表示がないと違法、被害発生で犯罪成立!


愛犬の生命に危険を及ぼすようなモノは、本来販売できません。メーカーは法律的にも、再発防止の観点から、パッケージにその危険性を表示する義務があります。

         「注意!犬に食べさせたら腹部が膨張して死ぬ場合があります」

                 飼い主が、加害者とならないために・・・




※AGD・GDV=鼓腸症のこと





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Author:わんわんわん
ドライドッグフードと鼓腸症との関連性を勉強しています。

これらの情報を大切な愛犬の食餌管理にお役立てください。

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