2009/06/30
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2009/06/25
反芻動物の急性胃拡張(鼓腸症)
反芻動物には大きな仕切られた胃があり、4つのサブユニットから成り立っている。第一胃(瘤胃)、第二胃(蜂巣胃)及び第三胃(重弁胃)は、単純な胃と形態的及び機能的に類似する臓器である第四胃(皺胃)の近くにある特有の消化及び発酵室である。第一胃の急性拡張は西暦60年以来知られている。これは通常、単に「第一胃鼓脹症」と呼ばれ、ウシ、ヒツジ、ヤギでよくみられるが、捕獲した野生の反芻動物も罹患することがある。第一胃は、単純な胃のものより著しく豊富な細菌叢保有し、健康な個体でも発酵槽として機能しており、AGDを特に受けやすい。
第一胃鼓脹症は、消化しやすい炭水化物の豊富な飼料を大量に摂取後15分から9,5時間以内に起こる。そのような飼料には以下のものが含まれる。
アルファルファ、ラディノクローバー、スィートクローバー、バークローバー、ムラサキツメクサ、シロツメクサ、ミヤコグサ、キャベツ、エンドウ、マメ、禾穀類、アブラナ、穀物、トウモロコシ。
第一胃のガス産生は、どのような栄養レベルの動物でも起こり、また食道の機械的な封鎖(リンゴ、ジャガイモ、ビート)あるいは噴門機能の妨害によってAGD(二次性鼓脹症)を起こすものまである。多汁性のマメ科飼料では、また適応期間後の穀物やトウモロコシでは、ガス産生が著しい速さで起こり、噴門や食道に病変がなくても、おくびが起こらない。多くの研究が費やされ、なぜおくびが出ないのか、鼓腸した個体の中に「単純な」ガス膨満を起こすものがあり、一方では「泡沫性鼓脹症」(挿管またはカニューレ挿入によって膨満を軽減できない程度まで摂取物内のガスの閉じ込めを特徴とする膨満)になるものがあるのかについて説明が試みられている。
おくびが出ない原因と言われているものには、噴門を刺激する粗い物質がないこと、流動性摂取物の下に噴門が沈んでいること、泡沫による噴門の閉塞などが含まれる。表面張力と安定した泡沫形成を高めることによって鼓脹の発生に影響を及ぼす要因には、タンパク質、サポニン、ペクチンやヘルロース、細菌性多糖類、微生物性粘液、糖及び水分が含まれる。唾液量の減少や6,0以下のphは泡沫の安定性を高める。
急性第一胃拡張を有する動物は以下のような特徴的な臨床徴候を示す。すなわち「腹部は著しく膨大し、左側腹部の壁は緊張性で、鼓脹する。皮膚は発汗により湿潤となる。呼吸困難は重度となり、鼻は拡張し、口は開き、舌を出し、多量の流涎がある」。脈拍数と呼吸数は増加し、呼気時のうなる音やうめき声が聞かれることがあり、また嘔吐も起こる。死亡は呼吸困難や循環不全によって起こる。第一胃破裂は稀に起こる。
反芻動物の第四胃拡張は1943年以来、かなりの関心や多くの論文をもたらしている。この障害は1896年に最初に報告され、現代の集中飼育や生産プログラムの下で生育、維持した乳牛で広まるまで、ほとんど注意を引かなかった。
第四胃は腹部の腹正中線上に位置し、液状物やガスで膨満すると、左方または右方に変位するようになる。左側へ移動すると、膨大した第四胃は左下ないし左中央腹部を占め、その病態は「第四胃の左方変位(LDA)」と呼ばれる。右側に移動すると、その病態は「第四胃の右方変位(RDA)」または臓器の捻転を伴っている場合には「第四胃の捻転」と称される。
捻転を伴った急性第四胃拡張は、穀粒、サイレージ、乾草などを給与した授乳中の雌牛とともに、穀粒や乾草の摂取を制限し、授乳や市販の代用乳を給与した子牛で起こる。臨床徴候は他の動物のものと同様であり、突然の摂食中止、速い心拍数、うなる音やうめき声、歯ぎしり、異常な体位、少量の下痢、右側腹部の膨満、聴診でピーンという高い音、打診で鼓音、右側腹部の聴診で水をはねる音、・・・・・・
外科的または内科的処置を行わない場合には、毒血症、内毒性ショックまたは腹膜炎によって死亡が起こる。
2009/06/21
ウマの急性胃拡張(鼓腸症)
ウマは機会があれば、AGDとその後の胃破裂を起こす時点まで穀粒を飽食することが古くから知られている。ウマが嘔吐することは稀であり、胃クライシスの時にのみ嘔吐する。したがって、この動物種の嘔吐は本質的にAGDの特徴であると見なせる。罹患したウマでは、誘発する食餌から4~6時間後に激しい疝痛の急発症が見られる。臨床徴候には、心拍数や呼吸の増加、発汗、振戦、回転、腹部を蹴る動作、イヌのように臀部で座る姿勢が含まれる。おくび、レッチング及び嘔吐は特徴である。
蠕動は減少するが、胃からの爆発音を聴取できることがある。胃破裂は通常、大弯に沿って起こり、続いて不安、著しい発汗、発熱、死亡が起こる。スコットランド、英国及びスェーデンでは、牧場のウマで発生するAGDは「胃スピロヘータ病」と呼ばれている。これは1909年に最初に報告された。
日本の三冠馬、ナリタブライアンも引退後、胃破裂で死亡している。
2009/06/19
サルの急性胃拡張(鼓腸症)
サルの急性胃拡張は、1967年に最初に報告されて以来、39症例記録されている(以降報告はある)。罹患した種には、アカゲザル、短尾ザル、ベニガオザル及びパタスザル(マーモセットも含む)が含まれる。ヒト及びイヌのAGDとは対照的に、捕獲サルのこの疾患を取り巻く状況はそれほど変動がない。飼育、運動、水及び飼料は調節されるが、この疾患は発生する。胃内ガス貯留と死亡はビスケット型モンキーフードの食後1~15時間に起こる。幽門付近の大弯に沿った二次性胃破裂と皮下気腫がよく認められるが、捻転は報告されていない。本質的に、いずれの症例も呼吸困難と循環血液量減少性ショックの結果として死亡に至る。
1971年に、ベニガオザルが急性鼓腸をきたしたとき直腸内容物からクロストリジウムが分離され、毒素が存在することが証明され、報告された。
1978年に、鼓腸をきたした23頭が10年がかりの検討で報告され、クロストリジウム・パーフリンジェンスが1頭のサルの胃から分離された。
1980年に、ヒヒ種、カニクイザル、アカゲザル、ベニガオザルの4種合計34頭が急性胃拡張を発症し、そのうち26頭につき、胃内細菌叢を研究報告するために微生物学的に検査したところ、21頭の胃内容物からクロストリジウムを検出。与えられていたモンキービスケットからもクロストリジウム・パーフリンジェンスA型が検出され、これらのビスケットを正常なサルに餌として与えたところ、急性胃拡張を発症しテストされた全てのサルの胃内容物から同細菌を分離することができた。
1981年に、ゲンタマイシン及びフラゾリドンを用いた抗微生物療法後のマーモセットが急性胃拡張を発症し、全部で29頭が5週間の間に死亡した。全てのサルの胃内容物にクロストリジウム・パーフリンジェンスA型が存在することが証明された。抗微生物療法を行った結果生じた胃内細菌叢の変化が、誘発要因とされた。
この29頭のマーモセットは一斉に空気を飲み込み始めたのか?
2009/06/18
他の動物種の急性胃拡張(鼓腸症)
文献によれば、「急性胃拡張AGDはヒトを含むいくつかの動物種で稀に発生する生命に危険のある疾患である。この疾患は類似性があるだけでなく、いくつかの動物種では実際に同一である・・・」とされている。また、AGDの胃の膨張が嚥下による「空気」あるいは「死ぬまで空気を飲み込み続ける」ことを証明した論文等も一切存在しない。ヒトの急性胃拡張
ヒトの急性胃拡張は、1842年に最初に報告され、また臨床象は1873年に明らかにされた。この疾患の特徴は、おびただしい量のガスと液体による胃の膨満、嘔吐、虚脱、死亡である。剖検では、胃の著しい拡張が認められ、胃がしばしば「腹腔全体を占める」程度まで拡大していた。1846年にも、捻転と破裂が大量の食事後にAGDに罹患した患者の主要な合併症として認められた。
AGDと因果関係があると思われるイベントに関する多くの情報により、その病因に関して多くの仮説が出された。最初の記述では、頭側腸間膜動脈の圧迫によって起こった十二指腸の閉塞が原因として提案された。提案された他の機序には以下のものが含まれている : 異常な自由移動と捻転、これによって起こる噴門と幽門の閉塞、胃の神経支配の器質的妨害あるいは薬物による妨害、神経筋の機能不全、胃の運動機序の反射抑制、空気の吸引、炭水化物の細菌発酵、ガスの化学的遊離。多くのレビュー論文では、さまざまな原因によってAGDが起こり得ると結論付けている。
いったん膨満が始まると、一連の共通したイベントによって同様の臨床的所見や病理学的所見を生じる。患者には「液体とガスによる胃の突発的な著しい膨満」が認められ、嘔吐を伴うか、あるいは嘔吐しない反復的なレッチング(悪心)を伴うことが多い。まもなく呼吸困難、脱水および末梢血管の虚脱が続いて起こる。腹部は突出し、打診では鼓脹音が聴取され、水がはねるような振とう音が誘発されることもある。また、蠕動は認められない。
数時間以内で、胃は「充血、チアノーゼを起こし、弛緩した嚢状に拡張して腹腔内に充満し、さらに骨盤低まで及び、穿孔寸前となり、重度の体液や電解質障害、血管虚脱を生じる」
捻転は、その腸間膜軸での胃のねじれであり、AGDに伴って稀に起こるが、これが起こる場合には、脾臓も同時に右方に変位する。胃破裂はよくみられる合併症である。破裂が起こると、腹痛は直ちに軽減し、腹膜炎と皮下気腫が続いて起こる。破裂は、小弯に沿って、噴門付近の前壁で最も高頻度で発生し、過度に充満した臓器に対する嘔吐性収縮の結果であると考えている人もいる。胃壁の活力低下はもう一つの合併症であり、胃全摘術を必要とするときもある。AGDによる死亡は、横隔膜の圧迫と、後大静脈を介して血液が心臓に環流するのが妨げられることによって起こる血液量減少性循環障害の結果である。
2009/06/14
検証:犬の急性胃拡張AGDにおける胃内ガス総産出量
AGDに罹患したグレートデンが毎食時350グラムのドライドッグフードを食べていた場合、1時間毎に約3,5リットルの胃内ガスが産出し、毎食時400グラムを食べていた場合、1時間毎には約4リットルのガスが、4時間では約16リットルに匹敵する。(2006年12月19日 宣誓供述書より抜粋)H.J. Van Kruiningen, DVM, PhD, MD
Department Head and Director CVMDL
December 19, 2006
References
Fruit and vegetable fiber fementation by gut microflora from canines
K. S. Swanson et al. J, Anim, Sci, 2001. 79;919-926
2009/06/11
今日もどこかで鼓腸症 明日はどこでGDV....ワンコが~!(13)
解説これも実話。 登場人物・製品名などは仮名 ワンコと犬男ちゃん
食うてみ編の続きです。
胃袋ポン!編
デン達に大豆を含まないフード、ガススクナイを与えると捻転(鼓腸症)の発生は、ピタ!と収まるようだ。前回の悲劇から14日経過していた。実験的に今度はガススクナイ7:ガスデルデル3の割合で混ぜたものを数頭のデンに食べさせてみた。すると給餌して間もなく1頭に異変。頭を下げてウロウロ、ウロウロ歩きだしたと思うと・・・
ウゲ、ウゲ、ウゲ、オ~エ~!
「ナヌ、嘘やろ!」
食べたフードを吐き出すことができない。餌皿にはまだ少しフードが残っている。
「なんちゅうこっちゃ~!」
苦しそうにヨダレを出し、既に腹部は固く張り、じわりじわりと膨らんでくる。まさに魔の症状だ。直ちに動物病院へ搬送。即効、犬男はエムエム営業担当者に連絡した。
「また、捻転ナった!今動物病院に向かってる最中やけどすぐ来てほしい!」
獣医師が吸引処置をしている最中に担当者がやっと来た。既に麻酔されたデンの口からチューブが胃の中に挿入され、泡立つ胃内容物が吸い出す音とともにビンに中に溜まっていく・・・
ジュルジュルジュル・・・ジュル!
哀れなワンコの姿を目の当たりにさせられた担当者はまさに地獄の瞬間だったに違いない。このデンは吸引処置がいったん成功したが、数時間後再び膨張した。チューブ挿入が不可能であったため今度は開腹手術が施された。幸いその後は回復した。
犬男の犬舎は、まさに魔の実験場と化していた。といっても普通に餌を与えているだけ・・・。
そして数日後、またもや別のデンに悲劇が襲った。
ウゲ、ウゲ、ウゲ、オ~エ~!
「これで決定やな!」
このときも、ガススクナイとガスデルデルの混ぜたものを食べさせていた。すぐエムエムに連絡し、このことを伝えた。すると担当者は、
「犬男さん、もうガスデルデルやったらあかん!・・・」
このデンは膨張が激しいため応急処置をした。右側の腹壁から皮下針を用いて胃の中に差し込んだ。圧迫されたガスが漏れる音が聞こえ、その音と一緒に不快な悪臭がする。数秒のうちに、デンの苦痛は緩和され、一時的に延命できるが胃内容物を排出しない限り、一貫したガスの膨張は続く。直ちに動物病院へ。
このデンは捻転を伴っており吸引処置ができず、緊急手術をすることに。腹部にメスが入り開腹した瞬間、風船状に大きく膨らんだ胃袋がポン!と飛び出してきた。このようなことは過去にも何度かあったが、破裂したときより状況はまだましだ。結局手術は成功したが、元気がなく数日後、死亡した。
つづく
2009/06/07
ペットフード・リスク情報ネットワークシステム(仮名)
このネットワークは全国の獣医師を繋いで情報を集めるもので、動物病院に来院したペットの診断結果や飼い主から何を食べたかなどの情報をシステムに入力。日本獣医師会の協力で「ペットフード・アドバイザリーグループ」(仮名)を立ち上げ、同グループの専門家がシステムに入力された(一般開示されるかは不明)症例を分析。類似した症例が多数発見された場合には農林水産省・環境省の両省が調査し、有害物質が発見された場合、製品の回収や販売の中止を命ずるもので、本年度から運用方法を検討し、2010年度に施行する予定になっているという。飼い主の対応
獣医師からの質問に対し飼い主がチェックしておくべきこと。
ブランド名と製造者、製造日(メーカーに問い合わせればわかる)、フードの種類(すなわち、ドライ、セミモイスト、ウェット)、給餌法(日に何回与えていたか、自由摂取か)、一定のブランドのフードをペットが摂取していた期間、現在のフードの入れ物から給与していた期間、フードに水が混合されているか、フードが餌容器に残っていた期間、フードの保存方法。
食餌に原因があることを突き止める原因究明にとって、試料として重要なもの。
与えていた食餌、胃内容物、腸内容物、糞便。
注意事項
多発している鼓腸症に関連して。
犬の鼓腸症すなわち、急性胃拡張AGDもしくは胃拡張捻転GDVを引き起こす病原菌クロストリジウム・パーフリンジェンスがドライドッグフード製品から検出されています。ヴァンクライニンゲン博士の知人で、クロストリジウム研究の世界的権威者グレン・ソンジャー博士(Dr. Glenn Songer)は実際に犬舎で作業をしながら、犬達に与えられていたドライドッグフードのサンプルから、かなりの数のクロストリジウムが再生されていることを報告しています。
したがって、ドライドッグフード製品の取り扱いには充分注意し、もし被害に遭遇した場合は、そのフードを保管し、その後は絶対に使用しないで下さい。またその時の犬の状態をビデオで撮影するなど記録を残しておきましょう。
2009/06/05
今日もどこかで鼓腸症 明日はどこでGDV....ワンコが~!(12)
解説夢の中編
犬男ちゃん吠える
オイ!エムエム!オマエら自分とこの餌が原因でワンコぎょうさん死んでること知ってるやろ!?
世界中で胃袋風船が大爆発や!
え!犯人は空気?
オマエらアホやろ!
近所の小学3年 ポチコロスナ君に犬男が聞いてみた。
オイ!ポチ坊!ワンコは空気飲み込んで死ぬことってあるんか?・・・
「にいちゃんアホちゃうか!ワンコ空気なんかで死ねへんわ!変なモン食うから死ぬんや!」
つづく
2009/06/02
米国飼料検査官協会AAFCO
1909年にAAFCOを結成する際、初期の監督官は動物の飼料に関する法規と一貫性が必要であると認識していた。AAFCOにはカナダ領と米国内の各州の動物飼料検査官が構成メンバーとなっている。AAFCO委員会の連絡事務所と調査官にはペットフード製造業者の代表や米国動物病院協会(AAHA)、米国獣医師会(AVMA)、カナダ獣医師会そしてペットフード協会(PFI)などの機関の代表らが構成メンバーになっている。米国では、成熟動物用メンテナンスフード用のAAFCO試験プロトコルは6か月かけて行うが、使用する動物の数は各郡8頭にすぎず、限られた数の指標をモニターすれば良いことになっている。そのような試験に合格したからといって、そのフードが長期にわたる栄養問題や健康問題の予防に有効であるとか、発生率が15%以下の問題を検出できるという保証はない。同様に、こうしたプロトコルは最適な成長あるいは最大の活動を保証するために作られたものではない。・・・・
小動物の臨床栄養学第4版より抜粋