2009/04/23
厄介な鼓腸症を回避するには、愛犬達に何を与えればいいのか?
この問題を解決に導く論文がある。また、他の犬の病気でも役立つと思う。「野生肉食動物の食習慣:胃内容物の分析に関する総合報告」 にはこのように書かれている。
イヌにはいかなる食餌が適切かについては、獣医関係者間でも見解の不一致が多い。肉・脂の飼料を推奨し炭水化物の必要を疑問視する栄養学者がいる一方、炭水化物の必要を論じ肉タンパク質偏重の弊害を提唱するものもある。さまざまな市販ドッグフードが出現しており、大げさなテレビ広告に獣医関係者やオーナーは困惑しているのが現状である。
肉食動物の食生活には、野生動物の専門家らが捕食者・被食者の関係とその変動の解明のため長年にわたって関心を寄せている。本報告では、胃内容物分析の文献を選んで調査した。この方法は糞便検査よりも多くの情報が得られ、直接観察法によるものよりも報告数が多いからである。
コヨーテコヨーテは、農家に経済的損失を与えるため、その捕食行動には多くの研究がある。狩猟や罠による捕獲で研究に利用できる標本数が多く、本種の食習慣はよく調べられている。食餌対象は、齧歯類の摂取が多い一方、ウサギ、シカ、ヒツジ、その他の家畜、マウス及びラット、鳥類、屍肉、植物、昆虫、スイカや柿などとなっている。
キツネキツネも家畜に大きな被害をもたらすものと考えられており、コヨーテに並んで多くの研究がある。食生活の分析によれば、簡単に捕食できるものを食する便宜的な肉食動物である。食餌対象は、ウサギ、齧歯類、マウス、ラット、家禽、ヒツジ、屍肉、シカ、小型哺乳類、昆虫、草類、果実などとなっている。
オオカミオオカミの食習慣は、その社会的行動によって調節されている。多くの食料は群れの共同作業で捕獲される。比較的大型であることと、群れで狩りを行うことにより、多様な動物を上手に捕食することができる。食餌対象は、シカ、ヘラジカ、バイソンの残骸、カリブー、家畜、屍肉、ウサギ、ビーバー、マウス、齧歯類、などとなっている。
(以下、論文中にあるネコ科の、ボブキャット、ピューマ、オオヤマネコは省略します)
考察
野生の肉食動物の食生活に関する多くの調査から、自然条件に生息する肉食動物の主要な食餌対象は、他の動物や屍肉であり、ときに果実や草類を含むものであると結論できる。捕食者が大型であるほど被食者も大型となる。オオカミやピューマは大型の動物を倒すことができ、他の小型の肉食動物よりも摂食頻度は少なく、摂食時には大食する。
イヌはオオカミの子孫とされているが、現在の多様な品種の存在は、他のイヌ科動物との交配によってもたらされたものと考えるべきであろう。家畜の犬種の大半は、コヨーテやキツネなどの単独で狩猟する肉食動物に類似した体構造、体格、獰猛さ、及び狩猟能力を有しており、小動物を捕獲し、屍肉を食し、場合により果実や草類も摂食する。
これらのデータは、中型、小型の肉食動物はときに狩猟者として、ときに清掃者として、手に入るものを摂食する動物である、ということを示唆する。解剖学的には、家畜の犬種の消化器系は上述の肉食動物のものと似ている。強い犬歯と消化能力の高い単胃を有し、食道・胃・腸の筋層は厚く、盲腸があり、大腸は単一で囊状ではない。
これらの報告を総じて、旧来の胃内容分析法の限界を考慮しても、肉食動物は自然な環境においては動物性のタンパク質、繊維質、粗飼料(植物繊維ではなく、骨、軟骨、鱗、ヒレ、毛皮、羽、腱、歯などの動物屍体の非もしくは難消化性組織)の摂取量が高く、炭水化物やカロリー密度は低い(野生のウサギ肉の脂肪分は5%に匹敵)と推測するのが合理的と思われる。
野生の中型、小型肉食動物は捕食に努め、休息をはさんで実りのない清掃活動と狩猟活動に勤しみ、一日のうちに(実際には夜間に)何度も摂食していることは疑いえない。胃内容物の分析からは、肉食動物の咀嚼は最少回数にとどまり、丸ごと(つまり消化できない部分を含んで)飲み込むのを好むことがわかる。
野生肉食動物の食習慣についての知見を、家畜の犬種の食餌飼料に生かすべきである。
とされており、大豆などの穀類は食べないことが示されている。
References
Landry SM, Van Kruiningen HJ, Food habits of feral carnivores. A review of stomach content analysis. JAAHA 1979; 15:775-82.