GDV(鼓腸症ともいう)で死亡した犬の外見的特徴


裁判での証言


AGDもしくはGDVによる腹部膨張の原因が空気嚥下(説)とすると、




「もうぱんぱんに腫れて、これ以上飲めないだろうというところまで拡張しています。」






参考資料

大阪地方裁判所 平成17年(ワ)4444号 

証人調書

平成18年10月5日

Jean A. Hall (ジーン A ホール博士)

オレゴン州立大学 生物医科学部 獣医学 助教授





スポンサーサイト



犬の胃内容物排出および運動性に対する食餌組成の影響




この論文には下記の指摘がある。


たった1日の給餌実験から得られたデータ。




犬の胃内容排出および運動性に対する食餌組成の影響:
急性胃拡張における関与の可能性
  


Colin F. Burrows, B Vet Med, PhD; Ronald M. Bright, DVM MS; Crispin P Spencer, DVM



要約

胃拡張・捻転は急激に起こり、生命を脅かす大型犬の疾病である。その原因は不明であるが、しばしばドライシリアルべーすの食餌摂取がその誘発因子なのではないか主張されることがある。そこで本試験では、市販のドッグフードが犬の胃の運動性および内容物排出に対しどのように影響するかを検討することを目的とした。

乱塊法デザインで4頭の大型犬に3種類の異なる食餌を与えた(食餌A=肉類ベースの缶詰、食餌B=シリアルベースで77%水添加、および、食餌C=ドライシリアルベース)。各実験は3重測定で行った。

胃の運動性は、胃漿膜および近位十二指腸に沿って縫合したAgAgCI電極5本とストレンゲージ2本を用いて評価した。犬には毎日同じ時間に食事を与え、消化管(胃腸)運動性パターンが摂食時から空腹時へと変化する時間を測定した(「切り替え」)。

胃内容排出は、胃の放射能を記録して評価した。標識樹脂を混合した食餌を与えた後、放射活性の対数を時間に対してプロットし、胃内容排出の半減期を計算した。3種類の食餌の給餌から切り替えまでの平均時間は、Aについて9.7±0.9時間、Bについて10.5±0.4時間、Cについて11.0±0.8時間であった。食餌が胃内容排出半減期に与える影響はごく僅かなものであった。

(食餌Aでは2.2±0.3時間、食餌Bでは2.6±0.4時間、食餌Cでは2.9±0.3時間、)。このデータは、健康な大型犬の胃の運動性および内容排物出は、食餌組成により影響されないことを示している。

大部分の大型犬はコストと扱いやすさからシリアルベースの食餌を与えられているため、これらの
食餌が胃拡張・捻転の誘発因子であると誤解されてきた可能性がある。

                 (中略)

結果

胃内容排出-等しいカロリー量を与えた場合、缶詰の肉類ベースの食餌、ドライシリアルベースの食餌、および水と混合したドライシリアルベースの食餌は、いずれも同じ速度で胃から排出された(表2)。平均は(1)缶詰の肉類ベース、(2)ドライシリアルベース+水、(3)ドライシリアルベースの順で徐々に増加されたが、その増加は有意なものではなかった(表3)。

しかしながら、同じ食餌を与えられた各犬間に有意な変動が認められた(表2)。外科手術は胃内容排出速度に有意な影響を与えなかった。

消化管(胃腸)運動性-食餌組成は運動性の食後パターンに影響を及ぼさなかった(表4)。給餌から切り替えまでの時間は(1)缶詰の肉類ベース、(2)ドライシリアルベース+水、(3)ドライシリアルベース(表4)の順で徐々に長くなったが、その増加は有意なものではなかった。また、個々の犬の間で、切り替えまでの時間に幅広い変動があった(表4)。

                 (中略)


考察

本試験の結果、食餌の物理化学的組成は胃内容排出速度または犬の消化管(胃腸)の運動性の食後パターンの時間に影響を及ぼさないことが明らかになった。このことは、食餌の組成が胃の機能に影響を与え、胃拡張を誘発する因子であるとする仮説が成り立つ可能性が低いことを示している。

胃内容排出を制御するメカニズムは複雑であり、食餌の酸性度、浸透圧および脂肪またはトリプトファン含量すべてが胃内容排出速度に影響する。液体もまた、幽門を通過するには直径1mmより小さい粒子に分解されなくてはならない個体よりも速く排出される。これらすべての理由から我々は、缶詰の肉類ベースの食餌およびドライシリアルベースの食餌のような、全く異なる物理化学組成の2種類の食餌は異なる速度で胃から排出されるであろうと推測していた。

しかしHuntおよびStubbsは、人間において食事の胃からの排出速度には、その栄養素密度から予測できることをしめしており、我々の実験で用いた食餌は容量は異なるものの等カロリーであったことから、翻って考えれば、胃内容排出速度に差異がなかったことは驚くに当たらないのかもしれない。

食餌の排出にかかった合計時間(2~3時間)はおそらく、胃液の分泌および前庭部の収縮にとって十分であり、したがって、食餌の物理化学的組成による差異を生じなかったのであろう。

                 (以下略)


























GVDによる胃の膨張は空気嚥下 死の原因は空気なのか


ペットフード御用学者らの論拠、空気嚥下説すなわち、空気を飲み込むこと。

アメリカでは年間約、4万~6万頭の犬がGDVに罹患するとされるが、これらの犬も突然空気を飲み込みだしGDVに罹ったのか?
犬を死に至らしめるのは空気なのか?





犬の胃拡張捻転症候群における胃ガス解析

Dennis Caywood,DVM
H.Douglas Teague,DVM,MS
Dennis A.Jackson,DVM
Micheal D.Levitt,MD
John H.Bond,Jr,MD

犬の胃拡張捻転の臨床症例7例から得た胃ガス試料を用い、窒素、酸素、二酸化炭素、水素およびメタンの濃度を測定した。
酸素と二酸化炭素を除き、ガス濃度は大気中の空気と類似していた。胃ガスの発生源とその成分、病因と関わりについて
考察する。

諸言

犬の胃拡張捻転の素因は依然として明らかになっていない。これまでに、空気嚥下、発酵-腐敗説、化学作用によるガス発生説、ガス拡散説等々、胃拡張時の発生源を説明しようとして種々の説が提唱されてきたところである。健常な動物における胃腸ガスの主たる発生源は空気嚥下であることが判明している。健常な犬の上部消化管から採取したガスの比率と濃度は大気中の空気と類似していた。

                   (中略)

材料と方法

 胃拡張捻転でミネソタ大学付属小動物病院で受診した犬からガス試料を入手した。観察された臨床徴候は、腹部圧痛、腹部膨張、空嘔吐およびショックであった。病歴と身体所見に基づき診断が行われ、犬7頭中6頭は手術によって診断が確定した。

                   (中略)

結果

 我々は急性胃拡張と鼓音がみられる臨床症例からガス試料を採取、評価し、これに基づいて所見を得た(表1)。胃ガス試料7個を解析し、窒素、酸素、二酸化炭素、水素、メタンの濃度を求めた(表2)。どの犬においても、ガス濃度の合計は正確に100%とはならなかった。これは二酸化炭素を別に解析したこと、および器具から生じる誤差とおもわれる。

採取した胃ガス濃度の平均値を大気中の空気濃度と比較した(表2と図1)。胃ガス濃度と大気中の差異はわずかなものであったが、何頭かの犬においては酸素と二酸化炭素の濃度が大きく異なった。酸素濃度は9.3~21.8%の間であり、平均値は14.0%であった。水素とメタンの濃度は極めて低く無視できる程度であった。(表2)

考察

胃拡張より死亡した犬を検視して得たガス試料を評価した結果、ガスの死因は細菌による発酵作用であるとした研究があった。この研究は、ガス中の二酸化炭素濃度が高かったこと、および、クロストリジウム属が胃内容物から分離されたことを根拠としていたが、水素およびメタン濃度については検証されなかった。

これに対し、我々の研究では、二酸化炭素の発生源は発酵作用によるものではなかったことがわかった。水素およびメタンは発酵作用によってのみ産生されるが、胃ガス中の水素およびメタン濃度は無視し得るほど極めて低かったのである。犬7頭中3頭で手術時に胃内容物を培養したが、嫌気性細菌および好気性細菌の培養ではクロストリジウム属は得られなかった。

                   (中略)

測定された二酸化炭素濃度は化学作用によって二酸化炭素が産生されたことによるものと考えられる。すなわち、の唾液には1リットル当たり34.7mEqの重炭酸塩が含まれている。胃液分泌型に伴って多量に分泌された唾液が嚥下れることで重炭酸反応が高まり、多量の二酸化炭素が産生さらものと思われる。

                   (中略)

我々のデータは、犬の胃拡張捻転症候群における胃ガスの主たる発生源は嚥下された空気であるという考え方を裏付けている。この説は胃ガス濃度と大気中の空気の構成が類似している点を根拠にしている。

空気嚥下が胃膨張捻転と進行し胃捻転に至るとの仮説は、臨床および実験による研究結果と一致している。犬の胃拡張捻転の原因は不明である。現時点での知見は主にこの疾患の病態生理学に限られたものである。

胃拡張の原因病理学に関する臨床および実験的研究を今後行う必要がある。



犬の胃拡張捻転症候群における胃ガス解析


ドライドッグフード GDV発症の確率 パデュー大学

                      
                          陳述書

1) 経歴

私は現在パデュー大学(米国インディアナ州)獣医学部病理生物学科で疫学および環境医学の教授をしています。同大学においては臨床疫学部長も兼務しています。私は、ニューヨーク州立大学(ビンガムトン)において生物学の学士号および生理学の修士号をそれぞれ1964年および1966年に取得しました。また、1972年にペンシルベニア大学獣医学部でD.V.M.を取得しました。1975年には、ピッツバーグ大学公衆衛生大学院において、疫学および伝染病学のM.P.H.を取得し、また、1977年には疫学および公衆衛生学の博士号を取得しました。

私は米国疫学会から認定を受けており、1982年に特別研究員の地位を授与されました。私は、現在フロリダ州、ニューヨーク州およびペンシルベニア州において開業医の免許を持っています。

疫学では、人間および動物集団における疾病・健康のパターンを特定するために統計的分析が用いられます。1974年以降、私は、疫学者として動物の疾病および健康問題に関する250件を超える研究を行い、論文を発表してきました。これらの研究においては、疾病を有する対象と疾病を有しない対象を一組としてデータをチェックし、統計的分析により、遺伝子、環境または行動様式等の要因が当該疾病といかなる相関関係にあるのかを測定します。これらの研究により、疾病の原因が特定されることはありませんが、特定の環境、遺伝子プロファイル、行動またはその他要因を有する人間または動物が一定の疾病を発症する危険性がどの程度あるのかということがわかります。

1994年以降、私は、胃拡張-胃捻転(GDV)の疾病に関して、私の知る限りでは、学会の他のどの研究者よりも多い、13件の論文を執筆してきました。論文の詳細については末尾添付の履歴書を御参照下さい。また、私は、GDVの発症およびそれに起因する死亡の原因を特定するために、約2000頭の飼いイヌを対象に最長5年間の追跡調査を行いました。これは、伴侶動物(イヌ、ネコを指します)の健康に関する過去最大規模の研究です。さらに、アメリカン・ケンネル・クラブ、米国コリークラブ、ーリス動物財団およびラルストンピュリナ>(Ralston-Purina)を含む多数の団体から、GDVに関する研究支援を目的とするものその他の助成金を受けています。また、1996年から現在に至るまでの10年間、パデュー大学における「イヌの胃拡張-胃捻転研究プログラム」の部長を務めています。

GDVの危険因子に関する研究および一般的調査結果

私は、GDVに関する研究の一環として複数のデータを検討し分析しました。私が分析したデータベースの中で最も大規模なものは、Veterinary Medical DataBase(VMDB)から抽出したものです。同データベースには、ネコやイヌなどのペットの疾病に関し、米国に存する大学付属動物病院からの提供されたデータが標準化されて集積されています。このデータベースには、1980年から1989年までの期間における12の動物病院の診療録に記録された、GDVを発症した1934頭のイヌ(「症例」)およびGDVを発症していない3868頭のイヌ(「対象」)に関するデータが含まれています。このデータベースおよびその他の4-5組のデータベースにより、大規模な回顧的情報を分析することができました。

さらに、1994年から1998年まで、私は、パデュー大学獣医学部の臨床疫学部でGDVに関連する危険因子を調査するイヌの予測研究を実施しました。この研究では、GDVを発症しやすいとして知られる11種類の合計1920頭(秋田犬111頭、ブラッドハウンド126頭、コリー198頭、アイリッシュセッター264頭、ロットワイラー113頭、スタンダード・プードル135頭、ワイマラナー100頭、グレートデン216頭、アイリッシュ・ウルフハウンド193頭、ニューファンドランド298頭、およびセントバーナード176頭)のイヌが研究対象となっています。これらのイヌは研究開始時点ではすべて健康でGDVの病歴はなく、1998年まで5年間にわたり観察されました。私が知る限り、これは、この種の予測研究の中では世界で最も大規模なものです。

10年以上の期間に及ぶ研究で集積されたこれらのデータから、私は、GDV発症危険性を高める因子について複数の結論を得ました。まず、第1に純血種のイヌは、雑種犬に比べてGDVの危険性が平均して高いこと。第2に、イヌのGDVの危険性は加齢に伴い高まること。第3に、兄弟姉妹、子供など第一度近親者がGDVを発症しているという事実はGDVの危険性と関係すること。第4に、一般に、同じ犬種でもサイズが大きくなればなるほど、GDVを発症する危険性が高くなること。第5に、GDV発症の危険性は、イヌの体格に関連しており、その中でも深くて狭い胸郭を持つ犬種のGDV発症の危険性が高いこと。第6に、同じ犬種の中でも痩せたイヌまたは生まれて最初の1年に重病もしくは慢性疾患を患ったことのあるイヌは、GDV発症の危険性が高いこと。第7に、「怖がり」の性質を持つイヌは、GDV発症の危険性が高いこと。第8に、早食いするイヌは、GDV発症の危険性が高いこと。第9に、高い位置にある餌皿から食べるイヌは、GDV発症の危険性が高いこと。そして最後に、1日数回に分けて少量の餌を給餌されるイヌよりも、1日1回大量の餌を与えられるイヌのGDV発症の危険性が著しく高いこと。

上記に記載する因子のなかでも、最も重要な危険因子は、体格、年齢、第一度近親者にGDVの病歴があること、高い位置にある餌皿からの食事および1日に1回大量の食餌を与えられることです。さらに、ストレスがGDVを引き起こす触媒作用になることも研究で証明されました。例えば、旅行、新しい環境、食生活の急激な変化は、イヌのGDV発症を誘発するようです。高い危険を有してるイヌにこれら複数の要因が加わった場合、そのイヌがGDVを発症する可能性は非常に高くなります。

GDVは、種々の要因によって引き起こされる多因子性の疾病です。私が知る限り、GDVを引き起こす単一の原因はなく、各々共通点のない複数の要因が、あるイヌがGDVにかかりやすいか否かということに影響を与えているのです。第一度近親者のイヌにGDVの病歴があるイヌを繁殖させない、1日に2、3回に分けて少量の餌を与えるなど、GDVの危険排除または軽減するために、危険因子を知っておくことは重要です。それでも、これらの予防的処置を行うことよりGDV発症を完全に防ぐことはできません。

また、一定の大型および超大型犬は、その体格ないし体系ゆえにGDV発症の危険性が特に高いことが分かりました。圧倒的に危険性の高い犬種はグレートデンです。計算したところ、生後8年の間に、グレートデンは42,4%の確率でGDVを発症することが分かりました。私は、更なる研究の結果、飼い主がどれだけ予防策を講じるかに関係なく、グレートデンはその生涯のある時点において50%近くの確率でGDVを発症すると考えています。飼い主がその飼育に最善を尽くしたとしても、グレートデンの場合GDVを発症する可能性は非常に高いのです。

GDVの再発予防における胃腹壁固定術の重要性

GDV発症の危険性が低いイヌを選択せず、グレートデンのように危険性の高いイヌを飼うならばGDV発症の危険性を確実に減らすための唯一の方法は、胃腹壁固定術を施すことです。胃腹壁固定術は、胃の位置を正常な状態に戻し固定させる手術であり、GDVの再発予防に最も効果的であることが証明されています。GDVを発症したイヌに胃腹壁固定術を施さなかった場合、再発する確率は71%に達します。(1995年Egertsdottir)。これに対して、適切な処置を受け、すぐに胃腹壁固定術の手術を行ったイヌのGDV再発率は5%未満でした(同書)。ヨーロッパおよび米国の複数の臨床報告で、すべてのイヌに関して、胃内の空気の除去(減圧)を行った後、速やかに胃腹壁固定術を行うべきことが推奨されています。私は、手術を行わない場合のGDV発症率の高さを考えた場合、危険性の高いイヌ、特にグレートデンに関しては、GDVに罹患する前であっても予防的に胃腹壁固定術を施すだけの価値があると考えています。

私の研究から、GDVによる死亡率は33%に達することがあると判断しています。飼い主が、GDVの症状を早期に発見し、すぐに必要な処置を講じることが、イヌの生存に極めて重要となります。

ヒルズ社の「サイエンス・ダイエッット」とGDVの関連性について

私が行った研究を含め、GDVの原因および危険因子に関し行われた研究の中で、特定のブランドのドッグフードがGDVと関係があるまたは発症原因であるとされるものは存在しません。

私は5年間の予測研究において使用されたデータに基づき、GDVを発症したイヌ(「GDV発症グループ」)とGDVを発症しなかったイヌ(「GDV未発症グループ」)が給餌されていた市販のドライ・ドッグフードを、ブランド別に比較してみました。この分析結果については添付を御参照下さい。

5年間の予測研究で調査対象となったイヌのうち、1592頭のイヌについては完全な食餌情報が得られています。1592頭のうちGDV未発症グループは合計1488頭、またGDV発症グループは合計104頭でした。これらのイヌに対しては、およそ70種類の異なる市販のドライ・ドッグフードが与えられていました。私達は、飼い主に対して、食餌に何らかの変化があった場合は私達に連絡するようにお願いするとともに、半年毎にイヌに変化がないかを確認しました。

GDVを発症しなかった1488頭にうち、62頭(4,2%)はヒルズ社のサイエンス・ダイエット製品を給餌されていました。反対に、GDVを発症した104頭のイヌの中では、3頭(2,9%)のイヌがヒルズ社のサイエンス・ダイエット製品を給餌されていました。ヒルズ社成犬用サイエンスダイエット・メンテナンスに限ってみると、メンテナンスは、GDV発症グループのうち2頭(1,9%)に給餌されていたのに対して、GDV未発症グループでは、38頭(2,6%)のイヌに給餌されていました。したがって、GDVを発症したイヌの中に占めるヒルズ社のサイエンス・ダイエット製品を給餌されていたイヌの割合は、GDVを発症しなかったイヌの中にサイエンス・ダイエット製品を給餌されていたイヌの占める割合よりより少なかったのです。

これを別の角度から見ると、研究対象となった1592頭(いずれもGDVを発症しやすいイヌ)のうち、104頭(6,5%)がGDVを発症していますが、ヒルズ社のサイエンス・ダイエット製品を給餌された65頭の中では3頭(4,6%)のみが、また、ヒルズ社の成犬用サイエンスダイエット・メンテナンスを給餌された40頭の中では2頭(5%)のみがGDVを発症しており、この確率は研究対象となったすべてのイヌに対してGDVが発症する確率である平均6,5%をかなり下回っていました。

この割合を、研究において給餌された別のその他大手ドッグフードブランドと比較すると、ユカヌバ製品を摂取したイヌは、GDV未発症グループには79頭(5,3%)おり、また反対にGDV発症グループには7頭(6,7%)いました。ユカヌバ製品を給餌されていた86頭(8,1%)にうち、7頭がGDVを発症したのです。また、アイムズ製品は、GDV未発症グループの123頭(8,3%)、GDV発症グループの13頭(12.5%)に給餌されていましたが、アイムズ製品を給餌されていた136頭のうち(9,5%)がGDVを発症したことになります。結論としては、GDVを発症したイヌの中でユカヌバまたはアイムズのいずれかの製品を給餌されていたイヌはより多かったのであり、これらの製品を摂取したイヌがGDVを発症した割合は、他の製品を給餌されたイヌよりも高かったことになります。

ヒルズ社のサイエンスダイエット以外の製品を給餌された1527頭のうち、GDVが発症した割合は6,6%(1527頭のうち101頭)でした。これと比較すると、ヒルズ社の製品を給餌されたイヌのGDV発症率は4,6%、またヒルズ社の成犬用サイエンスダイエット・メンテナンスについては5%でした。したがって、ヒルズ社のサイエンスダイエット製品を給餌されたイヌは、他の製品を給餌された場合と比べて、GDVを発症しにくかったことになります。

要約すると、私達の研究において、ヒルズ社のサイエンスダイエットのドッグフード製品が、イヌにGDVを発症しやすくさせるとする証拠はないのです。

大豆または発酵とGDVには関連性がないことについて

私が知る限り、市販のドッグフードに成分として含まれる大豆が胃内においてGDVを発症させる原因となるガスの発生を促進させること、また何らかの形で大豆がGDV発症の危険性に関与していることを証明した研究はありません。逆に、私の研究では、大豆がGDVとは無関係であることが証明されています。

私は、個人的に、GDVを発症したイヌの胃内におけるガスは、過度に呑み込んだ空気であり、バクテリアの発酵によって形成されたガスではないと考えています。私がこのように考えるのは、GDVを発症したイヌの胃内におけるガスが、室内の空気と同じ成分を有することを証明したDennis Caywood博士の研究に基づいています。また、胃拡張は数分で起こることもありますが、発酵によるガスはこれほど早く起こらないので、両者は矛盾しています。さらに、私の経験では、胃内に発酵するような食物が一切残っていない状態にある深夜の時間帯にGDVを発症したイヌの症例も多くあるのです。GDVを発症したイヌの胃内から処置の過程で取り出された食べ物が発酵していたようであったと専門家でない方がコメントしているのを見たことがありますが、これが発酵でないことは明らかです。胃内から取り出された食物は、例えば、胃の不調によりイヌが吐いた物(発酵されていない状態のもの)と同じものであり食物が胃内の高い酸性環境において分解された結果です。

結論:

一定の遺伝的な要因を含む様々な要因、特にイヌの体格および体型が、イヌがどれだけGDVを発症しやすいかに影響を与えます。胃腹壁固定術を施す以外に、危険性の高いイヌがGDVを発症する確率を排除する方法はありません。

私の研究では、ヒルズ社のサイエンスダイエット・メンテナンスとGDVとの間には関連性または因果関係は認められませんでした。イヌのGDVに関する10年間以上にわたる私の研究、またイヌの疾病に関する30年以上の経験・研究からして、私は、大豆がGDVの原因であるとも何らかの形で関与しているとも考えていません。

ヒルズ社の成犬用サイエンスダイエット・メンテナンスに含有される大豆がGDV発症の原因であるとする主張は、科学的証拠、実験または疫学的調査によって支持されるものではありません。

以上のとおり相違ありません。


 2005年11月25日

 Lawrence T. Glickman, DVM





ドッグフード裁判における学者の陳述、AGD細菌発酵説








ペットフード訴訟における学者の陳述 マークモーリス研究所執行役員 学習



                          陳述書

1) 経歴
私は、現在獣医臨床栄養学の教育を推進する非営利組織であるマーク・モーリス研究所の執行役員を務めており、獣医科系の学生を対象に教鞭をとっています。マーク・モーリス研究所は、日本の16の獣医科系大学(北海道大学帯広畜産大学岩手大学東京大学東京農工大学岐阜大学大阪府立大学鳥取大学、山口大学、宮崎大学、鹿児島大学、酪農学園大学、北里大学、麻布大学、日本大学および日本獣医畜産大学)を含め世界中における約40以上の獣医科系大学でペットのための栄養に関する講義を行ってきました。

また、私は、カンザス州立大学(米国カンザス州マンハッタン)獣医学部獣医臨床科学の非常勤講師を兼務しています。さらに、東京大学農学部獣医学課程の非常勤講師も務めており、2004年には臨床栄養学課程を担当したした。2006年にも再度教鞭をとる予定です。

また、現在ヒルズ・ペット・ニュートリション社(以下、「ヒルズ社」といいます)で、専門教育課程の部長を務めており、開業獣医師を対象に生涯教育を行っています。私は、ヒルズ社の臨床試験におけるコンテンツ・エキスパートであり、研究データを検証したり、私の専門分野に関連する事項に関し提言をしたりしています。ヒルズ社は、ドッグフードである「サイエンスダイエット・アダルト・メンテナンス」を含む、日本ヒルズ・コルゲート株式会社が販売するペットフードを開発し、製造しています。

私は、ノースカロライナ州立大学(米国ノースカロライナ州ローリー)獣医学部で動物学(学士)を専攻し、オハイオ州立大学(米国オハイオ州コロンバス)で臨床科学(胃腸病学)の理学修士号を取得しました。また、オーバーン大学(米国アラバマ州オーバーン)において獣医学の博士号を取得しました。私は、獣医心臓外科、大型動物内科、小動物内科、神経学および腫瘍学の分野における専門医を認定するための米国獣医師会の認可を受けた組織であるACVIM(米国獣医内科学会)が認定した内科専門医です。私は、ACVIMの資格認定委員会の元会員で、小動物内科の専門医としての認定を受けています。なお、ここにいう小動物には、大型および超大型犬を含むあらゆる種類の犬が含まれます。内科学会に加えて、消化器病学および臨床栄養学にも関心を持って研究しています。

2) 「小動物の臨床栄養学」について
マーク・モーリス研究所は「小動物の臨床栄養学」(第4版)というタイトルのテキストブックを発行しており、同書の日本語版の一部を原告が甲第39号証として証拠提出しています。私は同書の著者の一人であり、726頁から810頁(英語オリジナル版の頁数)の「胃腸疾患および膵外分泌疾患」その他の章を担当しました。これは、日本語版では827頁から921頁に相当します。以下では、頁数を示すときは日本語版におけるものを示すことにします。

この章は、胃腸系統ないし膵臓の中でもどの部分にかかわる疾患かということにより疾患を区別して論じています。したがって、この章の最初の頁にあるとおり、この章は、さらに下記の節に分かれています。口腔疾患(833頁から835頁)、咽喉疾患および食道疾患(835頁から841頁)、胃の疾患(841頁から854頁)、小腸の疾患(854頁から878頁)、大腸の疾患(878頁から892頁)、膵臓の機能不全(892頁から910頁)、症例(901頁から921頁)。

胃拡張(GD)とは、胃が気体、食物ないし液体の交じり合ったもので拡張した状態を言います。胃拡張・胃捻転(GDV)では、胃が拡張・稔転して、胃の内容物は閉塞し、胃、脾臓、膵臓への血流が阻害されます。GDVでは心臓の血液の環流も阻害されるため、イヌがショック状態に陥ることがあります。胃拡張もGDVも胃の病気であり、よって、本書「胃の疾患」の節の中の847頁から850頁において記述されています。

これに対し、原告が甲第39号証の一部として引用している890頁ないし892頁は、「大腸の疾患」の節の「鼓腸(flatulence)」の項からの引用です。「鼓腸」とは、正式な定義では、消化管に過剰なガスが存在する状態を指し、したがって、胃中に嚥下された空気が溜まっている状態をも含む概念です。それにもかかわらず、「鼓腸」は、一般的に医学用語としても非専門家の間でも腸にガスが溜まった状態を指して使われており、胃にガスが溜まった状態については用いられていません。本書で著者が「鼓腸」という場合は、大腸にガスが溜まった状態を指しているのであり、胃にガスが溜まった状態のことは指していません。

888頁に説明されているとおり、鼓腸(正式な定義)においては、オナラが出る、げっぷが出る、お腹が鳴る(腹鳴)などの症状が見られます。しかしながら、さらに同頁に説明されているとおり、イヌの飼い主にとっては、過剰なオナラが慢性の不快な問題であり、よって獣医師に対し鼓腸に関するアドバイスが求められることになります。オナラの原因は大腸における過剰なガスであるため、鼓腸に関する記述は本書888頁から892頁の「大腸の疾患」の節の中で論じられているのです。

「鼓腸」という疾患はGDVとは異なります。GDVとは違って、鼓腸自体はイヌの健康にとって危険なものではなく、ただ飼い主にとっては不快であるというだけです。「小動物の臨床栄養学」における「鼓腸」についての記述はGDVについての記述ではないのです。すなわち、大豆がGDVに対する危険要因だとするものではありません。反対に、849頁に記載されているように、大豆を含有する食物は、以前、GDVの危険要因ではないかと疑われたこともありましたが、最近の研究では、実際には大豆を含む食物がイヌのGDVの危険性を高めるものではなかったということが証明されています。大豆を含む食物がGDVリスクを高めるものではないということは、現在では獣医学の消化器官専門家の間で定説となっています。

3) 鼓腸ないしGDVにおけるガスの産生
本書「鼓腸」に節の中に、ガスが産生されるいくつかの原因について示した図22-20があります(891頁参照)。図22-20の下の注記には、消化吸収されなかった食物が大腸を通る過程で細菌(バクテリア)により発酵されることを示しています。この発酵過程は大腸でガスを発生させるのです。消化しにくい成分を含む食物は大腸におけるガスの産生を高め、よって鼓腸を引き起こす可能性があるのです。

GDVは上述したように胃の拡張に関する疾患です。図22-20に示されるように、発酵により生じるガスではなく、嚥下された空気が胃中における過剰なガスの源です。事実、胃中に存在する細菌は極めて少ないために、図22-20では胃には細菌の存在が示されていません。図22-20では、細菌の存在は大腸の部分にのみ図示されています。胃酸の産生度が極めて高いために、胃中の細菌の総数は極めて少ないのです。胃中では細菌が少ないために、健康なイヌにおいては、未消化の食べ物は胃中で発酵するより前に胃から排出されて腸に達してしまいます。消化しにくい食物が胃中で過剰なガスを産生することはありません。ガスが産生されるのは大腸においてであり、よって、GDVとは関係ありません。GDVでは胃中の気体により胃が拡張し捻転しますが、これを引き起こすのは嚥下した空気です。イヌが食べたドッグフードの成分は嚥下した空気の量には何らの影響も与えません。

4) 大豆の危険性

原告は、甲第57号証として、「AZ Professional Dog Food 」というタイトルの書面を証拠提出しています。同書面には、(1)大豆には、トリプシン・インヒビターという大腸における酵素の働きを妨げる物質が含まれており、消化不良を引き起こす原因となる、および、(2)ドッグフードの製造工程では食物は30秒しか加熱されず、大豆に含有されるトリプシン・インヒビターは中和されない、との記載があります。

大豆に含有されるトリプシン・インヒビターがドッグフードの瀬尾象工程においては中和されないというのは事実ではありません。ウォルサムペット栄養総合研究所著の「犬とネコの栄養学 第2版」に記載されているとおり、トリプシン・インヒビターは熱に弱く、ペットフードの製造工程における加熱によりその大部分が除去されます。ヒルズ社の製造技術者に確認したところ、ヒルズ社のドライドッグフード製品は、製造工程のさまざまな段階において、華氏170度から300度(摂氏約77度から149度)の高熱で30分ないし45分間加熱されています。この過熱と調理時間は大豆に含まれるトリプシン・インヒビターを中和するのに十分なものです。

サイエンスダイエット・アダルト・メンテナンスを含む、大豆を含有するヒルズ社が販売するドッグフード製品はいずれも臨床試験を行いAAFCOの基準をパスしなければなりません。この試験をパスしているということは、すなわち、サイエンスダイエット・アダルト・メンテナンスを含むこれらの製品において、生の大豆に含まれているトリプシン・インヒビターが製造工程において消化機能に何らの影響のないレベルまで除去されていることを示すものです。

いずれにせよ、トリプシン・インヒビターが小腸での消化や大腸での発酵を阻害することにより生じる消化不良の問題とGDVとは関係がなく、また、これがイヌのGDV発症リスクを高めるものではありません。イヌに大豆を与えることによりGDVのリスクが高まることを証明するいかなる証拠も研究も存在しません。私のイヌの消化器官における生理学的なガス産生のプロセスに関する知見からしても、また、GDVに関する現在の学術論文からしても、イヌのGDV発症とイヌに対し大豆を与えることは何らの関連性もありません。

5) GDVリスクと特定のブランドのドッグフードの関連性の不存在

私が認識している限り、GDVのリスクと関係があると科学的に証明されている食物と関連する要因は食餌の量のみです。研究によれば、一日に1度だけ、量の多い食餌を与えられているイヌはGDVを発症する危険性が高いことが証明されています。私の知る限り、いかなるブランドのドッグフードを与えているかによりGDVのリスクが異なるとの結果を示した科学的ないし学術的な研究はありません。

私が知るGDVの学術文献からも、他の獣医学者との意見交換からも、また私自身の獣医胃腸学者としての経験からしても、サイエンスダイエット・アダルト・メンテナンスもしくはその他の大豆を含有するヒルズ社の製品に、他のブランドのドッグフードに比して高いGDV発症リスクがあるとは考えられません。GDV発症の危険性がどのブランドのドッグフードを与えているかによって影響されることはありません。

以上のとおり間違いありません。


 2005年10月11日

Deborah J. Davenport, DVM




ドッグフード裁判における学者の陳述、AGD細菌発酵説







                

書籍

プロフィール

わんわんわん

Author:わんわんわん
ドライドッグフードと鼓腸症との関連性を勉強しています。

これらの情報を大切な愛犬の食餌管理にお役立てください。

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

QRコード

QRコード