AGDとクロストリジウム菌


【AGD犬の胃】

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【顕微鏡検査】

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図3-対照イヌ(S7099)のグラム染色した胃内容物
図4-自然発症したAGDのイヌ(S3456)のグラム染色した胃内容物。多くのグラム陽性桿菌に注意すること。
図5-自然発症したAGDのサル(S5007)のグラム染色した胃内容物。多くのグラム陽性桿菌に注意すること。

上記の写真は、AGDを発症したイヌの検死解剖15症例中14例の胃内容物で回収されたもの。それら有機体を培養し、特定された細菌クロストリジウム・パーフリンジェンス(別名ウェルシュ菌)が増殖しているところ。




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図6-実験的に誘発したAGDのイヌ(実験用イヌ番号6)のグラム染色した胃内容物。多くのグラム陽性桿菌に注意。    Dr.Van Kruiningen HJ 1974年論文より


【AGD発症中の犬】

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ドライドッグフード(大豆を含む)を与え続けると、AGDを引き起こす危険性がある。


【外科手術】

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クロストリジウム・パーフリンジェンスはイヌの胃の中で爆発的なガス発生をもたらす。また、ガス壊疽を引き起こす猛毒性の細菌でもある。産生する毒素は細胞を殺しながら成長し、壊疽性の組織を作りながら筋束に沿って移動する。最終的に、毒と細菌は血管に入り込み、体中に広がる。AGDに罹ったイヌの胃が壊死していることがある。









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病原菌

ラクトバチルス酸、ペプトストレプトコッカス属、サルシン、及び酵母はまたイヌの細菌叢を構成するもので、ガス産生能力を持つ・・・


ワーナー・NS&ヴァンクライニンゲン・HJ イヌの胃におけるクロストリジウムの発生率と急性胃拡張との関係 アメリカ動物病院協会ジャーナル1978年9/10月号第14巻


はじめに
急性胃拡張(AGD)は多くの動物種が罹る、突発性の、しばしば末期の胃腸疾患である。イヌでは大きな犬種に最もよく発症する。以前の研究では、細菌発酵が胃のガス発生源であるとの多因子的な病理発生を示した。クロストリジウム・パーフリンジェンスは嫌気性菌であり、活発なガス産生で知られ、AGDの症例では対照のイヌに比べて多く見られ、より頻回に剖検で回収されることから特に注目されていた。

AGDにおける胃のクロストリジウムの役割についてさらに追及するため、この研究を実施した。我々の目標は、1)100匹の健常なイヌにおける、胃のクロストリジウムの発生率を同定及び判定し、2)分離したC・パーフリンジエンス有機体の毒素発生性、毒素の種類、及び/または血清株を判定し、3)健常なイヌからクロストリジウムとAGD症例で見られるクロストリジウムの比較を行い、そして、4)AGD症例の胃内容物におけるマウス致死性のC・パーフリンジェンス毒素の探索を行うことである(中略)。


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結果
100匹の健常なイヌにおける所見
検体の39%でグラム陽性有機体が占めた一方で、グラム陰性菌有機体は25%であった。検体の31%では、グラム陽性とグラム陰性が同等に分布したが、残り5%の塗抹標本では酵母とスピロヘータが多くを占めた(表1)。

血液寒天培地での通気培養法により、同様の微生物の異種組み合わせが明らかになった。グラム染色塗抹標本でのように、単一の微生物群が多数を占める事はなかった。11%の症例でグラム陰性有機体が最も数が多く、50%の症例ではグラム陽性タイプで、その一方、37%の検体では同等数であった。血液培養での初期の分離は症例の2%で陰性であった(表2)。

100匹の正常なイヌのうち、72匹の胃内容物からクロストリジウムを分離した(表3)。多くは用いられた3種類の固形培地での初期分離から回収した。72のクロストリジウム分離物のうち、70をC・パーフリンジエンスと同定した。2症例でクロストリジウム・バイファーメンタンスを同定し、同定されなかった2つのクロストリジウムspp.はやはりC・パーフリンジェンスを収量した症例から分離した(表4)。

全てのC・パーフリンジェンス培養物からの毒素は実験マウスに対し非致死性であった(表4)。17のC・パーフリンジェンス分離物で、ホッブス型の抗血清に対し陽性凝集を呈した。菌分布は変化に富んでいた(表5)。CDC(疾病予防管理センター)によって処理された分離物は全て、91の抗血清いずれにおいても既知のC・パーフリンジェンス株に対し凝集しなかった。

AGD症例における所見
9症例のAGDについて調査を行った。これらのうち、7匹は死亡し、症例1のみ死亡前に抗生物質で治療を行った。これらのうち5症例(症例2、5、6、7、9、)は死亡して見つかったか、または何らかの治療を試みようとした以前に死亡したかのいずれかであった。症例8にシメチコンを含有する制酸剤(Mylanta.Stuart Pharmaceuticals,Wilmington,DE)を死亡数時間前に投与した。追加の2症例(症例3と4)を鼓脹の早期段階で提起し、飼い主の要請により治療せず安楽死となった。表6はAGDの9症例をまとめたものである。

9症例中8症例から得た、ガス産生性胃内容物のグラム染色した塗抹標本により、これら検体の7症例でグラム陽性有機体が多くを占めていた。表1にあるように、グラム陽性有機体の種類は多くのものが存在した。グラム陰性有機体は症例9で主要な種類を示したが、それを除いては、各症例で少量の発生であった。AGDの各症例において、グラム染色塗抹標本で見られた有機体と、嫌気性血液寒天培地プレートでの初期分離から得た有機体の間に、よい相関があることが分かった(表2)。

クロストリジウムをAGDの9症例中6症例から分離した。それぞれをC・パーフリンジェンスと同定した(表3と4)。各分離物は実験マウスにとって非致死性であり、2つの分離物がホッブス型抗血清を凝集した。4つの分離物でC・パーフリンジェンスの91の血清株のどれにも陽性反応を示さなかった。症例4、5、及び6の胃内容物の致死性C・パーフリンジェンスの存在を調査した。存在は確認されなかった。

考察
100匹の健常なイヌ
胃内容物の塗抹標本及び培養を検討した後明らかになったことは、健常なイヌの胃から微生物はめったに排泄されないことである。このことは摂取物を含まない胃、死後ただちに標本化された胃でもその通りであった(表7と8)。微生物の存在は犬種及び/又は動物の重量に関連なかった(表9)。これら多数の胃の微生物は、生存可能な嫌気性菌であった。

表1で示される通り、新鮮な胃内容物の塗抹標本中には、グラム陽性桿菌及び球菌、グラム陰性桿菌及び球菌、酵母、そしてスピロヘータなど様々な微生物が観察された。これら微生物の分布は非常に可変性があり、大部分のサンプルで単一形態群の優位はないと見られる。この可変性はおそらく食餌、摂取物の量、胃のph、胃の運動性、死亡とサンプリングの間隔の違い、及びその他の因子のためと思われる。

100匹の健常なイヌのうち、72匹に胃内容物のクロストリジウムが存在し、これら70の分離物をC・パーフリンジェンスとして同定したことは、この有機体が健常なイヌの胃に生息することを示している。様々な犬種の胃内容物及び、摂取物が排泄され、死後直ちにサンプリングした胃においてこの細菌が継続的に示されることは、これを実証するものである。他に数人の研究者らもまたC・パーフリンジェンスを健康な動物から分離した。細菌叢に対するクロストリジウム有機体の比率は可動性が高かった。クロストリジウムが優位な微生物であった健常なイヌがおり、それらを示すために、繰り返し分離を試みることが必要な症例があった。

C・パーフリンジェンス以外のクロストリジウム種を、健常なイヌから継続的に分離できなかったことは、他の種はイヌの胃をコロニー形成することができず、非常に少数で存在し、あるいはサンプリング技術が証明するのに適切でなかった事を示唆している。予備試験の間、使用された培地で多くの偏好性クロストリジウムを分離し同定したため、はじめの2つの可能性のうち1つが支持される。

健常なイヌのC・パーフリンジェンス分離物の血清学的、また毒性試験の結果は、それらが血清学的及び毒素非産生株の組み合わせからなっていいる事を示している。一部の分離物が、二次培養及び保存中に毒素産生性を喪失した可能性が考えられるが、これがどの症例にも起こったことは考えにくい。

AGD症例
試験を行った自然発症のAGD9症例それぞれにおいて、生存可能な嫌気性微生物が見られ、回収された。多くの症例の塗抹標本及び培養において、グラム陽性が優位なことが注目された。対照サンプルのように、優位であったグラム陽性有機体の種類は変化に富んでいた。AGD症例の胃の内容物におけるグラム陽性有機体の優位性は、初期所見に一致する。クロストリジウムに類似しているグラム陽性桿菌がC・パーフリンジェンスを収量した各症例で見られたが、優位な数では存在しなかった。鼓脹早期に安楽死となり、直ちに剖検を行った症例は、その後、線状及び球状細菌と比較して低濃度の短いグラム陽性桿菌を収量した。これらの症例で観察した変動性は、健常なイヌに比べて、AGD症例には非常に大量の胃内容物が存在することを反映するものであろう。強調すべきは、AGD症例からの各検体は、培養している時に、盛んにガスを産生していた事である。微生物の発酵がこのガスの発生源であれば、原因となる有機体が塗抹標本、接種培地、或いは両方で、継続的に観察されるのが妥当と思える。このように遭遇する変動性は理解しがたい。AGD症例から分離したクロストリジウムの発生率と種類は、100匹の対照サンプルから得たものと類似していた。対照及びAGD症例両方から得た、それらC・パーフリンジェンスと同定したクロストリジウムは毒素非産生性であり、血清株の組み合わせでなっていた(中略)。

AGDの病因
AGD症例の胃内容物における明らかなガス発生、このガスの可燃性質、自然及び実験AGD症例に見られた胃の二酸化炭素と水素の顕著な増加は、AGDが細菌発酵により発生することを示している。ガス産生性クロストリジウムの分離、胃を結紮したイヌの熱処理した胃内容物によるAGDの実験的発生、そして鼓脹症例の大部分におけるC・パーフリンジェンスの存在はC・パーフリンジェンスが病因菌である事を示した。AGDとこの微生物による他の胃腸疾患を比較しながら、さらに推測した。AGDと他のクロストリジウム胃腸疾患の特徴には、暴飲暴食、徴候の突然発症、及び大量のガスの蓄積がある。このような増加が、おそらく食餌の変化や高タンパク又は高炭水化物を与えることで起こるという事が示されている(中略)。

この研究で示した事は、クロストリジウムが72%の健康なイヌの胃に、そして67%のAGD症例に存在することであった。追加の、或いは代わりとなる方法があれば、おそらく全てのイヌにおける存在を確認しただろう(以下省略)。








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